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ワクチン接種のときのもうひとつの選択肢~ワクチン抗体価~
大切なワンちゃんネコちゃんのために、定期的にワクチン接種を受けさせている方も多いと思います。
もしかしたら動物病院で言われたから何となくワクチンを打っているけど、あまりワクチンのこと知らないかも…という方もいるかもしれません。
今回はワクチンの話でも、“抗体価”を中心にお話ししたいと思います!

ワクチン抗体価って??

ワクチンとは感染症の予防のために、体のなかに免疫を作らせる免疫源のことです。このワクチンを投与することで感染症にかかるのを防ぐことができる、もしくは感染しても軽い症状で済むことができます。

ひと昔前までは命を脅かすような感染症にかかる犬猫がそれなりにいましたが、近年はワクチンが普及したおかげで、重篤な感染症にかかっている犬猫に遭遇することはかなり少なくなったように思います。ワクチンのおかげで危険にさらされるワンちゃんネコちゃんが減ったのは嬉しいことですよね!

ワクチンで作られる免疫には、“効果が維持できる期間”があるため、1〜3年に1回の接種が推奨されてきました(ワクチンの種類によって接種間隔は異なります)。この効果が維持できる期間はその子によってそれぞれ違ってきます。また、予防接種でもよく心配されることは“副作用”ですよね。
そこで近年、体の中にきちんと免疫があるどうかを調べ、免疫がある場合はワクチンを打たなくても良い、という選択もできるようになってきました!
ここで言う“体の中の免疫”を調べる方法が、ワクチン抗体価と呼ばれる血液の検査です。簡潔に言うと、ワクチン抗体価が低い=体の中の免疫が不十分、なのでワクチンを打ちましょう、という話になります。

ワクチン抗体価は絶対調べた方がいい?

次のグラフを見てください。これはワクチンを打った後、体の中で免疫がどのくらい強化されるのかを示しています。ワクチン接種直後は線がグンと上がってしっかりと免疫がつくられていますね(線がオレンジ色のところ)。徐々に少なくなっていき、やがて抗体が十分ではなくなっていきます。

じゃあこれからはこのワクチン抗体価を調べて、必要な場合だけワクチンを接種すればいいのね!と思うかもしれませんが、実は少し複雑な落とし穴があります。

ワクチン抗体価を調べることができるウイルスの種類が決まっているのです。

犬で抗体価を調べられるウイルス
    犬ジステンパーウイルス
    犬アデノウイルス
    犬パルボウイルス
猫で抗体価を調べられるウイルス
    猫パルボウイルス
    猫カリシウイルス
    猫ヘルペスウイルス

犬の混合ワクチンには5種混合や7種混合など色々ありますが、どのワクチンにも抗体価を調べられるウイルスと調べることができないウイルス、両方が混じっています。つまり、ワクチン抗体価を調べてからワクチンを打つか決める場合と、定期的にワクチン接種をする場合と、どちらにもメリットとデメリットがあります。

ワクチン抗体価を調べてからワクチンを打つか決める場合
メリット:必要以上に接種することがない、副作用の可能性を少なくできる

デメリット:調べられないウイルスの抗体価が分からないので、その感染症にかかる可能性がある、測定した時は十分な抗体価があっても、それがいつ低くなるかは予測できない

定期的なワクチンを打つ場合
メリット:しっかりと感染症予防ができる

デメリット:副作用の可能性がある

このようにワクチン接種に関してもいろいろな選択ができるようになってきました。

選択肢ができたことで、例えば過去にワクチンを打ってアレルギーが出た子に対しては、ワクチン抗体価を検査して今後どうするのか決めましょう、など、その子その子に合わせたワクチン接種プログラムを考えることができると思います。

さいごに

もっとワクチンについて詳しく知りたい!という方は、WSAVA(世界小動物獣医師会)がワクチン接種におけるガイドラインを2024年に発表しています2)。こちらを見てみてくださいね。もちろん分からないこと、聞きたいことがあればいつでも相談にいらしてください。
参考文献
1)FUJIFILM HP感染症検査(犬):ワクチン抗体価セット | 富士フイルム [日本]

2)WSAVAワクチンガイドライン2024 2024 guidelines for the vaccination of dogs and cats – compiled by the Vaccination Guidelines Group (VGG) of the World Small Animal Veterinary Association (WSAVA)