動物のおへそについてあまり気にする機会はないかもしれませんね。実は、ワンちゃんネコちゃんにも“でべそ”と言われるような状態があるのをご存じですか?
お腹のあたりを撫でていたらぷっくりと柔らかく、しこりみたいなものがある…!
それは、もしかしたらおへそのヘルニアかもしれません。
臍ヘルニアとは?
ヘルニアとは、体の中の一部が、本来あるべき場所におさまっておらずに出ていることを言います。
おへそのヘルニアは“臍(さい)ヘルニア”と言います。
臓器を覆っている壁である腹壁(ふくへき)やその周りにある腹膜(ふくまく)に穴が空いていることで、お腹の中の脂肪や臓器がお腹の中から外に出てしまっている状態です。
臍ヘルニア以外のヘルニア
似たようなものとして、“鼠経(そけい)ヘルニア”と呼ばれるヘルニアがありますが、これは足の付け根の鼠径部と呼ばれる部分に穴ができてしまい、そこから脂肪や臓器が出ている状態 です。
臍ヘルニアの原因
臍ヘルニアのほとんどは、生まれつきです。
そもそも、おへそはどうやって出来るか知っていますか?
へその緒は母親のお腹の中にいるときに胎盤と繋がっていて、そこから酸素や栄養をもらう役割をしていますよね。産まれてすぐにへその緒は切り離され、おへそが出来あがります。
そのタイミングで皮膚や筋肉(腹壁)そしてその下にある、お腹の中の臓器を覆っている腹膜が全て閉じていくのですが、腹壁や腹膜が完全に閉じないことによって穴が空いている状態になり、中から脂肪や臓器が出てきて臍ヘルニアができます。
また、成長過程で腹壁や腹膜はきちんと閉じ、臓器はお腹の中に収まっているけれど、外側に脂肪組織が残っているだけの臍ヘルニアも存在します。臍ヘルニアの大きさは、穴の大きさと外側に出てくるものによって、小指の先ほどの小さいものから、握り拳ほどの大きさまでいろいろです。
臍ヘルニアの症状
症状はヘルニアの穴から出ているものによって変わります。
穴が小さく出ているものが脂肪だけで、押すとお腹の中に戻っていくヘルニアは痛みはなく特に症状はありません。
一方で、穴の大きさがそれなりにあると腸や子宮、膀胱などの臓器が出てくることがあります。臓器が外に出てくると、穴の出口で締め付けられ、押してもお腹の中に戻らずに血流が途絶えてしまうかもしれません。
この状態になるとヘルニアの部分は赤紫色になり、動物は痛くて食欲や元気がなくなり、早急に対処する必要があります。
臍ヘルニアの治療
押しても体の中に戻らないヘルニアになった場合、血流が障害された臓器は壊死してしまうリスクがあるため、緊急手術が必要なこともあります。
ヘルニアがあっても無症状の場合は緊急で手術が必要なわけではありません。ただ今後、臓器が出てきてしまうリスクをふまえて、避妊去勢手術などの全身麻酔をするタイミングで同時にヘルニアも治療すると良いでしょう。
ヘルニアの手術は、ヘルニアの穴を探し、外に出ている臓器を体の中に戻し、その後ヘルニアの穴を塞ぎます。
ただし、ヘルニアの穴を塞げばいいだけではないこともあり、外に出ていた臓器のダメージの程度によっては、その臓器が正常に機能しないため、それに対する処置も必要です。
さいごに
臍ヘルニアや鼠経ヘルニアがあっても特に問題が起きないこともあります。これまで何ともなかったのに、何かのきっかけで臓器が出てきてしまい、急に症状が悪化することもあります。
ヘルニアがあると分かった時点で無症状の場合は、すぐに手術を行う必要はありませんが、ヘルニアの状態や穴の大きさ、麻酔や手術のリスクなどを考えたうえで、どのタイミングで治療を行っていくかは一緒に相談して決めていきましょう。