ワンちゃんネコちゃんにがんが見つかった時、「なぜ、うちの子にがんが?」と悲観的になられる方も多いです。それでも、がんが見つかったワンちゃんネコちゃんを支え、共に闘おうとするご家族の力になれればと思います。

がんが見つかってからの暮らし
動物病院でがんと診断されても、今までの生活環境を大きく変更する必要は通常ありません。これまで通りのご飯やトイレ、睡眠、散歩や運動などはできるだけ続けてあげてください。ワンちゃんネコちゃんがこれからがんと闘っていく上で、栄養の摂取や排泄、筋肉の維持はとても重要なのです。栄養摂取や筋肉量が低下すると、栄養不良につながり、一気に弱ってしまうこともあります。
基本的にはこれまで通りの暮らしをしてもらいたいのですが、その上で普段の生活でちょっと気にかけてほしい点を紹介します。
ご飯について獣医師から特別な指示がない場合、これまでと同じ食事内容やあげ方で大丈夫です。
ただ、以下の点には注意して、変化があった場合には動物病院へ連絡してください。
トイレトイレの場所や数なども大きく変える必要はなく、散歩中に排泄するワンちゃんも原則は今まで通りのタイミングでお外へ連れて行きましょう。ご飯同様に、注意してほしい点は次の通りです。
散歩や運動(ドッグラン含む)獣医師からの特別な指示がなければ、制限する必要はありません。
お風呂やトリミング体調をよく観察しながらであれば、お風呂に入れてあげる、トリミングを受けさせてあげることも可能です。獣医師にトリミングを受けさせていいか確認し、トリマーさんには
「どこにがんが見つかったのか、どんな治療を受けているのか」
などを伝え、トリミングができるかどうか確認してみてください。
ベッドがんの治療とともにワンちゃんネコちゃんの身体が弱ってくると、長時間同じ姿勢で寝ることが多くなりがちです。長時間同じ体勢でいることで、床ずれ(褥瘡とも言います)が生じやすくなります。
そのため、低反発素材などの市販の床ずれ防止マットをベッドに敷いて予防しましょう。寝返りを打てないワンちゃんネコちゃんは数時間ごとに姿勢を入れ替えてあげてくださいね。

抗がん剤治療を受けているワンちゃんネコちゃんで気をつけてほしいこと
抗がん剤を投与して2〜3日間は嘔吐物や排泄物(おしっこやうんち)に抗がん剤の成分が含まれているため、ご家族や同居の子へ曝露されてしまう可能性があります。多頭飼いされている場合には、同居の子とトイレを分けた方が良いと思います。
病院で抗がん剤の注射や点滴を受けた場合は、その後2〜3日間、ご自宅で継続的に抗がん剤を飲ませている場合は継続して次のように対応してください1)。
排泄物や排泄物が付着したペットシーツ、猫砂などは直接触れず、ゴム手袋などを着用して処理しましょう
二重のビニール袋で密閉して、一般ごみとして廃棄して下さい
処理後は石鹸でよく手洗いしてください
屋外で排泄した場合は処理を確実に。おしっこは他の子に曝露してしまわないように十分に洗い流す特に排泄物の処理は、妊娠している方やお子さんにさせないよう注意してください!!
また、嘔吐物や排泄物で汚れたものを洗濯する際は、他の洗濯物と分けて行いましょう。通常の洗剤で構いませんので、2度洗うようにすると効果的です。
さいごに
ワンちゃんネコちゃんにがんが見つかったとしても、今までしていたことやできていたことを出来るだけ維持してあげてくださいね。これまで通りの生活を送ることは、その子にとってもストレスを少なくできると思います。
がんの種類や治療法、その子の今の状態によっても詳しい注意点は変わってくるので、分からないことは聞いてください。私たちスタッフと一緒に、ワンちゃんネコちゃんの力になっていきましょう。
参考文献
1)Suzuki M et al., Survey on the safe handling of anticancer drugs in veterinary medicine. Jpn J Pharm Health Care Sci. ; 41: 373-87. 2015.