あなたは自分の歯を磨きますか?どのくらいの頻度でしていますか?
こんな質問がきたら、おそらくほとんどの方が「もちろん、毎日歯磨きしてます!」と答えるでしょう。
では、なぜ毎日歯磨きをしますか?
多くの人が「虫歯や歯周病にならないように」、「歯磨きしないと気持ち悪いから」などと答えるのではないかと思います。
普段、私たちはきっと顔を洗う、お風呂に入るのと同じくらいの感覚で歯磨きしていますよね。
では、ワンちゃんにも同じように歯磨きしているよ!という人はどれくらいの割合でいるのでしょうか??
……意外と少数かもしれません。
もちろん歯ブラシを買ってやってみたけど、ワンちゃんが嫌がってなかなかさせてくれない、チャレンジしたけど上手くいかない…!と頑張っている方もいるでしょう。
ワンちゃんのデンタルケアは、私たちと同じようにとても大切なことです。
この機会にワンちゃんのお口について知り、できることから少しずつ、デンタルケアを始めてみませんか?

デンタルケアが大切なワケ
犬は人と違って、口の中の環境がアルカリ性であるために虫歯ができにくいと言われています1)。(ただ絶対にできない、というわけではありませんよ。)
犬は虫歯ができにくいかわりに、歯石ができやすいです。歯石とは、歯に付着した歯垢がそのままになっていると3日以内に石灰化し、石のように固くなったものです。さらに歯石が付いたまま放置していると、2週間以内に歯周病につながることが分かっています2)。驚きかもしれませんが、2歳までの犬の約80%が何かしらの歯周疾患があると言われているのです!3)
ちなみに、歯垢は歯磨きで落とせますが、歯石になってしまうと自宅でのデンタルケアでは落とすことはできず、病院で歯石取りをする(スケーリングといいます)必要があります。年に1回スケーリングすることで死亡リスクが18.3%低下する4)、という報告もありますよ!
歯の病気なのに死と関係あるの??と思った人もいるかもしれません。じつは、歯周病は体の色々なところに影響を及ぼす恐ろしい病気なのです。
歯周病ってどんな病気?
歯周病とは、歯の表面に付着している歯垢(=プラーク:細菌とその代謝物)により歯肉に炎症が起こり、その状態を放置すると歯肉、歯を支える靭帯や骨など、歯の周りの環境に炎症と破壊を起こしてしまう病気です。
歯周病が進行すると、細菌の感染によって歯を支えている骨が溶けてしまいます。これによって歯が抜けてしまった、アゴの骨が折れてしまった…なんてことが起こります。

他にも、歯の根元で細菌感染がどんどん悪化するとそこに膿が溜まりますよね。その状態が放置されると、上あごの犬歯などでは歯の根元と鼻腔がつながり鼻炎の症状(くしゃみや鼻水)が出ることがあります。上の奥歯の場合は目の下が腫れる・皮膚が破れて血膿が出てくる眼窩下膿瘍(がんかかのうよう)といった症状につながります。
さらに歯周病は、口の中の病気だけにとどまらず、歯周病の原因である細菌が血管の中に入って全身へ散らばることで、心臓や肝臓、腎臓などといった他の全身の病気を引き起こすことが分かっています。
つまり、歯周病を早期に発見して治療することで、これら病気の予防・死亡するリスクを下げることができます!

歯周病の予防をしよう
歯周病にならないようにするため、おうちでできるホームケア(歯磨き)がとても大切なことが分かりましたか?
大切なのは
歯周病の原因である歯垢を歯磨きで落とす!!
これが難しかったり、歯磨きしても落としきれない歯石は、定期的に病院で歯石取り(スケーリング)をおこない、歯周病を防ぐようにしましょう。

おわりに
ワンちゃんのデンタルケアが大切だということが分かっていただけましたか?
元気に長生きしてくれるためにも、日頃から少しずつデンタルケアしてあげられるといいですね!
口の中を触られたり、歯ブラシを入れられるのが怖い、嫌なワンちゃんも多いと思います。
嫌がっているところに無理やりしようとすると、どんどん非協力的になってしまい、ご家族も続けるのが嫌になってしまうかもしれません。
ワンちゃんもご家族も楽しく続けられるようなケアをすることでさらに絆が深まり、ワンちゃんが健康でいられる、それが一番大切だと考えています!
ぜひスタッフにお声がけください、その子に合ったケアを一緒に探していきましょうね。
参考文献
1) raser A. Hale, 2009. Can Vet J 50(12): 1301-1304
2)World Small Animal Veterinary Association Global Dental Guidelines 2020
3)Marshall, M. D. et al., 2014. BMC Vet Res 10
4)Silvan R Urfer et al., 2019. J Am Anim Hosp Assoc 55(3):130-137