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猫が痒がる皮膚のトラブル
猫にも皮膚トラブルがあるのを知っていますか?
ご家族からは見えない場所でコッソリ舐めるネコちゃんがいたり、あれ?こんなところにハゲがある…いつから?ということもしばしばあります。今回は猫の皮膚について、とくに痒みがある皮膚病のお話です。

皮膚トラブル、猫ならではの特徴

猫はグルーミングとして体を舐めるので、どの程度体を舐めるのが正常な行動なのか、どこからが痒みがあるのか、なかなか判断できないことも多いですよね。

また、猫の舌はザラザラしているので、短期間で一気に皮膚が悪くなることもよくあります。

猫のかゆい皮膚病

今回は痒みがでる猫の皮膚病を紹介します。

診断にはきちんとした問診や皮膚の検査が必要です。また、確定診断を行う前にある程度原因を予測して治療を行い、 その治療の反応を見てからきちんと診断ができる、というケースもありますよ。

寄生虫
疥癬
顔周りを中心にフケがみられ、とてもかゆがります。皮膚検査によってこの疥癬は顕微鏡で確認できます。この疥癬は人にも感染し、皮膚の赤みや激しい痒みがみられるので要注意です。


猫疥癬が寄生した猫
疥癬の虫卵(顕微鏡写真)


耳疥癬
耳疥癬とは、ミミヒゼンダニが原因で真っ黒な耳垢が大量に出てきます。とてもかゆいので頭部を掻く、首を振る仕草をします。耳垢を顕微鏡で観察することで、このミミヒゼンダニも見つけられます。
ミミヒゼンダニが寄生した猫の耳垢
ミミヒゼンダニ(顕微鏡写真)
皮膚糸状菌
皮膚糸状菌とは真菌(いわゆるカビ)の仲間です。

皮膚糸状菌の場合、ウッド灯と呼ばれる紫外線のランプを当てると青っぽく光ります。ただし、皮膚糸状菌には色々な種類があり、光らない種類もあります。ウッド灯で光らない=皮膚糸状菌ではない、とは限りません。病変部の毛を顕微鏡で見ると確認することができます。

ちなみに、この皮膚糸状菌は人にも感染するので要注意です!感染したネコちゃんの毛やフケはこまめに掃除をすること、塩素系消毒薬での消毒が有効です。
皮膚糸状菌に感染した猫の耳
ウッド灯検査で光る皮膚糸状菌
アレルギー性皮膚炎(ノミアレルギー、アトピー、食物アレルギー)
猫でのアレルギー性皮膚炎は多いです。ノミアレルギーはノミが関与するアレルギー反応であり、しっかりとノミ予防をすることで防ぐことができます。

アトピー食物アレルギーは、症状だけでは判断できないことも多く、治療をしながらどちらが原因なのか(両方を併発していることもあります)探っていきます。
その他にも、ウイルス関連免疫が関連するものストレス(心因性)など、いろいろな皮膚の病気があります。
ノミアレルギー
猫アトピー性皮膚炎

皮膚病の治療

皮膚病の原因が分かればそれに応じた治療をおこないます。治療には次のものがあります。
滴下薬
ノミなどの外部寄生虫の駆虫や予防のために使います。しっかりと毛をかき分けて、ネコちゃんが舐められない場所に滴下してくださいね。
飲み薬
猫に薬を飲ませることは大変!!と感じている方は多いと思います。
食事の中に薬を混ぜると、警戒して食事そのものも食べなくなってしまう子もいますよね。

粘土のように形をかえることができ、薬を包んでおやつとして与えることができる投薬補助や、直接口の中に薬を入れる方法、嚙まれる場合には投薬するための道具であるピルガンを使う方法などがあります。

治療のためにはどうしても薬を飲んでもらわないといけない時もあるため、普段から顔や口周りを触る、口を開けさせてもらう、などをコミュニケーションの一環として行い、なるべく慣れさせておくことをおすすめします。
食事の変更
食べ物が原因で痒みがでてくる食物アレルギーが考えられる場合には、食事を変更してもらうようにお願いすることがあります。
食事変更のコツ
ただ、ネコちゃんの中には新しい食事を嫌がる子も多いですよね。食事を変更する場合、今まで与えていた食事に、新しい食事を少し混ぜてください。少しずつ新しい食事の割合を増やし、1~2週間を目安に新しい食事に完全に切り替えることを目指すと良いですよ。

また、開封したキャットフードは、どうしても徐々に風味が損なわれていきます。なるべく少量の袋を購入する方が、風味も損なわれずにネコちゃんも食べてくれます。

食いつきが良くないな、と感じる時にはウェットフード・ドライフード共に電子レンジで少し加熱すると食べてくれることもあるので、ぜひ試してみてください!(必ず耐熱容器に移し、火傷には注意してくださいね)
物理的な保護
猫の舌はザラザラで、舐めるとすぐに皮膚の状態が悪化してしまいます。エリザベスカラーや服などで、舐めないように保護をおねがいすることもあります。

さいごに

猫の痒みはすぐに脱毛や赤み、ブツブツにつながり、あっという間に悪化することも多いです。皮膚のトラブルに気が付いたら、まだ軽症のうちになんとか痒みをおさえてあげたいですね。

もし痒みがあるのかな?と感じた場合は早めに来院・ご相談くださいね。
画像提供
村山 信雄先生(犬と猫の皮膚科 代表)