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何だかワンちゃんの歩き方がおかしい?と感じたら
犬は4本の足を動かして歩き、運動します。このうち1つの足、もしくは複数の足に何らかの異常が起こると足をかばっている、引きずっているような異常な歩き方をします。

犬の場合、歩行に異常をきたしている場合でも、興奮して走り出せば痛がるそぶりもなく元気に走っている、でも運動が終わって安静にしているとまた異常な歩行をしている、というようなこともしばしば見られます。

私たち人間は自分で、どこがどの程度痛いと認識できますが、動物の場合はどこに痛みがあって原因は何なのかを、こちらで気づいてあげる必要があります。

今回はいつもと歩き方がおかしい場合に考えられる病気を紹介します。

どんな歩き方をしているか

歩き方がおかしいという主訴で動物病院に来られた場合、獣医師は診察室に入ってくるときの歩き方に注目しています
どのような歩き方をしているのか、どの足が原因なのか、完全に足を挙げてしまっているのか、少しなら体重をかけられそうか…
というのも、動物病院に来て、診察台にのるとぱったりと異常がなくなったり、歩行検査をすると普段通りの歩き方をしたりするワンちゃんが少なくないからです。 
それは痛くなくなった、治ったのではなく、痛みや違和感よりも“動物病院に来た”という興奮により異常が隠れてしまっているのです。これから診察をするタイミングで、最も興奮度合いが少ないのは診察室に入ってくるところなので、私たちは入る時の歩き方から注意してみています。

自宅でできること
動物病院では歩き方の異常をみせてくれないワンちゃんもいます。その場合、私たちはどのように歩き方がおかしいのか見ることができません。ですので、可能であればスマートフォンなどでおかしな歩き方をしている時の動画を撮っておいてもらえると役に立つことがあります

原因疾患の診断

実際に歩き方の様子が分かったら、その原因を探っていきます。
主な原因は骨や関節、筋肉、腱、靱帯(じんたい)といった部位にあり、このうちのひとつ、もしくはいくつかに異常があると歩き方に影響がみられます。このような時には痛みを伴うことが多く、その時に見られる異常な歩き方を“跛行(はこう)”と言います。また、椎間板ヘルニアのような神経に障害がある場合にも歩き方に異常が認められることがあります

様々な病気で認められる異常な歩き方
後ほど述べますが、歩行に異常をきたす病気のなかには生まれつきのもの、小型犬(あるいは大型犬)によくみられるもの、年齢によって発症しやすいもの、などの特徴を持つ病気があります。つまり、ワンちゃんの品種や年齢などの情報は診断の手助けになります。

問診の次は、視診そして実際にワンちゃんの身体に触って検査(触診)を行います。

同時に、歩き方以外にも例えば、次のような目に見える異変がないかをチェックします。
なにか異物が刺さっていないか
怪我をしていないか など
触診により患部を特定し、必要に応じて血液検査やレントゲン検査、神経学的検査、関節液の採取などを行います。中には確定診断のためにCTやMRIなど、より詳しい画像検査が必要となる場合もあります。

異常な歩き方の原因となる病気 を以下にまとめました。1)

前足の異常(幼若犬)
骨折、脱臼、先天性の脱臼(肩、肘)、離断性骨軟骨症(肩、肘)、肘突起癒合不全、鉤状突起分離症
汎骨炎、肥大性骨異栄養症、肘関節形成不全
後足の異常(幼若犬)
股関節形成不全症、膝蓋骨脱臼、骨折、股関節脱臼、汎骨炎、肥大性異栄養症、大腿骨頭壊死、離断性骨軟骨症(膝、足根)
前足の異常(成犬)
骨折、脱臼(肩、肘)、変形性関節症、免疫介在性関節炎、骨、軟部組織の腫瘍、頸部の椎間板ヘルニア
後足の異常(成犬)
膝蓋骨脱臼、前十字靱帯断裂、半月板損傷、骨折、脱臼、アキレス腱断裂、変形性関節症、免疫介在性関節炎
骨や軟部組織の腫瘍、胸腰部の椎間板ヘルニア、馬尾症候群
かなり難しい名前の病気も並んでいますが、ここで知っていただきたいのは"歩き方の異常"というひとつの症状に対して、とても多くの種類の病気がある、ということです。

さいごに

手術をして治していく必要があるもの、薬で内科的に治療するもの、治療は難しく今後付き合っていかなければならないもの…病気によっての治療や対処はさまざまです。動物は痛みを隠そうとするため、症状が現れづらく、気が付いた時にはかなり進行していた、ということもあります。

いつもと何か違う…?程度でも構いません。明らかな歩行の異常でなくても、何か気になることがあれば一度、早めに相談、受診にいらしてくださいね。
参考文献
1)原康, 林慶, 監訳 2010. 小動物の整形外科・骨折治療ハンドブック 第4版,インターズー
動画提供:日本大学 枝村 一弥先生