大切なワンちゃんのために、定期的にワクチン接種を受けさせている方も多いと思います。
もしかしたら動物病院で言われたから何となくワクチンを打っているけど、どんな病気を予防できるの?本当に必要なものなの?と感じている方もいるかもしれません。
この機会にワクチンについて、少し知識を深めてみませんか?
犬のワクチンには、大きく分けて2種類あります。それは狂犬病予防法で接種を義務付けられている狂犬病ワクチンと、任意で接種する混合ワクチンです。今回お話しするのは混合ワクチンについてです。
ワクチンのタイプについて
すこし難しい話ですが、感染症の中には死亡するリスクが高かったり感染力が強いものもあり、そのような感染症に対するワクチンは生活環境にかかわらず、すべての犬に接種することが推奨されています。このタイプのワクチンをコアワクチンと言います。一方で、生活環境や流行状況によって接種が勧められるタイプのワクチンをノンコアワクチンと言います。
ワクチンで予防できる感染症の種類
ここからはワクチンで予防できる感染症の種類について解説していきます。たくさんあるので大変ですが、普段予防接種しているワクチンがどんな病気を予防してくれているのか、興味のあるところを読んでみてください。
コアワクチン
犬ジステンパーウイルス感染症とても伝染力が強い犬の感染症のひとつであり、致死率も高い感染症です。すでに感染している犬との接触、特に鼻汁・目やに・唾液などの分泌物、糞尿などの排泄物の接触や飛沫を吸い込むことでほかの犬にも感染します。
特に症状が認められないケースから亡くなってしまうケースまで、症状のあらわれ方もさまざまですが、多くは1週間~3週間の潜伏期間(症状がない期間)のあとに発熱し、鼻汁やくしゃみ、結膜炎、食欲不振や白血球の減少が認められます。その後、下痢や血便、肺炎が現れます。重症化すると脳にまでウイルスが到達することがあり、痙攣(けいれん)などの神経症状が見られることもあります。
感染しているけれど無症状の犬(不顕性感染)も糞便中にウイルスを排出するため1)、知らず知らずのうちにこの感染症が広がっていく可能性があります。
犬パルボウイルス感染症とても伝染力が強い犬の感染症のひとつであり、致死率も高い感染症です。すでに感染している犬との接触、特に鼻汁・目やに・唾液などの分泌物、糞尿などの排泄物の接触や飛沫を吸い込むことでほかの犬にも感染します。
特に症状が認められないケースから亡くなってしまうケースまで、症状のあらわれ方もさまざまですが、多くは1週間~3週間の潜伏期間(症状がない期間)のあとに発熱し、鼻汁やくしゃみ、結膜炎、食欲不振や白血球の減少が認められます。その後、下痢や血便、肺炎が現れます。重症化すると脳にまでウイルスが到達することがあり、痙攣(けいれん)などの神経症状が見られることもあります。
感染しているけれど無症状の犬(不顕性感染)も糞便中にウイルスを排出するため1)、知らず知らずのうちにこの感染症が広がっていく可能性があります。
犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)ジステンパーウイルス感染症やパルボウイルス感染症と症状が似ており、主な感染経路は感染している犬からの糞尿、唾液などの中に含まれているウイルスに接触することです。
感染初期には元気消失・発熱や水様の鼻汁が見られます。体の中に侵入したウイルスは扁桃・リンパ節で増殖し、そのあと血流にのって肝臓、腎臓、眼などへと広がっていき、肝不全や低血糖・肝性脳症(肝臓の働きが低下することで体内の毒物が処理されずに溜まり、脳がダメージをうけます)による神経症状が認められます。
重症な場合は、発症から数時間で亡くなる事もありますが、軽症だと感染後1週間程度で改善傾向を示します。回復期に角膜が青白色に濁るブルーアイという現象が見られることもあります。3)
犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型)ケンネルコフ、と言われる呼吸器疾患の主な原因ウイルスです。このウイルス単独での感染だとそれほど死亡率は高くありませんが、二次感染(他のウイルス・細菌に感染)により重篤化することがあります。典型的な症状として乾いた咳が認められ、興奮や運動しているタイミングや、気管を触ることで簡単にその咳が誘発されます。通常は発症後7日までに症状が治まることがほとんどです。4)
ノンコアワクチン
犬パラインフルエンザウイルス感染症アデノウイルス2型と同じようにケンネルコフの主な原因ウイルスであり、単独感染では死亡するリスクは低いですが、二次感染により肺炎を引き起こす可能性があります。症状は咳やくしゃみ、鼻汁です。
犬コロナウイルス感染症健康な成犬では感染しても症状が出ない(不顕性感染)ことも多く、正常な糞便に潜んでいる場合もあります。仔犬が感染すると食欲不振、下痢や嘔吐が見られます。単独感染では重症化しませんが、二次感染により重症化することがあります。
犬レプトスピラ感染症これまで紹介した感染症の中で唯一、細菌による感染症です。レプトスピラ症は人獣共通感染症であり、犬でも人でも感染が確認された場合には、届出の義務があります。
このレプトスピラ症はげっ歯類やアライグマの尿の中に細菌が排出され、その尿に汚染された土壌や水を犬が舐めることで、粘膜や皮膚から侵入して感染がおこります。
レプトスピラにはいくつかの種類(血清型)があり、それによって感染した後の症状が異なります。発熱や食欲不振、黄疸が認められることが多いですが、急激にDIC(播種性血管内凝固:全身の微小な血管の障害及び血管がつまることにより臓器に障害が起こる)が現れることがあり、この場合は高確率で亡くなります。また、急性腎不全や肝不全に陥る事もあり、注意しなければいけない感染症です。
以上が犬のワクチンで予防することができる感染症です。注射1つにいくつかの種類のワクチンが混ざっているため、混合ワクチンと呼びます。混合ワクチンは色々なメーカーで取り扱いがあり、含まれる種類も少しずつ違っているため、その子の年齢や生活環境に応じて適切な種類のワクチンを選ぶことが大切です。
さいごに
混合ワクチンを接種することで、これだけの種類の感染症からワンちゃんを守ることができます。中には感染力が強く、重症化する感染症もあるため、普段から気をつけていたとしてもウイルスが持ち込まれることがあるかもしれません。そんな時でもワンちゃんの感染を防ぐことができる、もしくは感染しても症状が軽くすむのがワクチンの効果です。
注意が必要な点として、ごくまれにワクチンの副反応がでてしまう子がおり、接種直後に見られるアナフィラキシーでは血圧低下やチアノーゼが見られることがあります。また、接種した後に少し時間が経過してから嘔吐や下痢、顔が腫れたり、身体のかゆみが見られることもあります。副反応が見られた場合にはすぐに獣医師が対応できるように、接種後は少しの間院内で様子をみたり、ワクチン接種をした日は自宅でのんびりさせてあげると良いでしょう。
また、ワクチンは適切なタイミングで接種しなければ効果が不十分なこともあり、その子に合ったワクチンのプログラムを組むので、ぜひ相談へいらしてください。
参考文献
1)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p960
2)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p958‐960
3)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p962‐963
4)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p963‐964