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てんかん発作って何?治療方法とは?
今日はてんかん発作についてのお話です。

大切なワンちゃんネコちゃんが急に発作を起こしたら、びっくりしますよね。しかし、このてんかん発作、決して珍しい病気ではなく、特にワンちゃんでは比較的多く認められる病気です。

今回はそのてんかん発作の原因や治療方法について詳しくお話していきます。

てんかん発作とは

てんかん発作とは、脳の大脳皮質と呼ばれる部分の神経の電気活動が異常となって現れる症状のことです。1)

犬猫の発作の大部分は全般強直間代性発作(全般性けいれん発作)と言い、意識が無くなってバタッと横向きに倒れ、身体がピーンと突っ張ったり、四肢が激しく屈伸を繰り返し、犬かきで泳ぐような動き(遊泳運動)をします。いわゆるてんかん発作と言われて思い浮かべるのはこのタイプではないかと思います。

この全般強直間代性発作ほど多くありませんが、焦点性発作(以前は部分発作と言われていました)という発作もあります。これは、身体の一部分で見られる発作や行動的な発作であり、症状としては、顔周りの筋収縮や1つの足または片側の前足と後ろ足だけがけいれんしたり、ハエ咬み行動(空中を仰いで噛むしぐさをする)、口をくちゃくちゃする、行動異常(徘徊や旋回、攻撃的になる、落ち着きがなくなる)などがあります。この焦点性発作が起きてから全般強直間代性発作へと変化していく場合もあります。1)
発作の種類
種類説明
全般強直間代性発作全身の筋肉が硬直した(強直発作)後に強直と弛緩が交互に起こる(間代発作)、または遊泳運動(横たわった状態で泳ぐように足を動かす行動)がみられる。初めから筋肉の強直と弛緩が交互に起こることもある。
焦点性発作顔周りの筋肉の収縮(けいれん)、四肢などが一定のリズムで収縮(けいれん)する、ハエ咬み行動、口をくちゃくちゃする、涎がでる、行動異常などがみられる。

てんかん発作がおきる原因

てんかん発作が起こる原因には、てんかん−特発性てんかんと構造的てんかん、頭蓋外の原因に起因するものの3つに分けられます。1)ちなみに、「てんかん」という言葉は24時間以上の間隔を空けて、2回以上のてんかん発作が起こるときに用いられる言葉です。
特発性てんかん
遺伝的な素因以外に明らかな原因や病変が認められない、原因不明のてんかんです。様々な検査を行っても、何の異常もないというのが特徴です(脳波検査のみ異常が出ることがあります)。一般的には6ヶ月齢以上、6歳以下に初めての発作が出ます2)。幾つかの犬種では遺伝性が強く疑われており、極めて少ないですが原因遺伝子が判っている犬種/てんかんもあります。てんかん発作を起こす犬の6割〜7割がこの特発性てんかんと診断されています3)
構造的てんかん(昔は症候性てんかんと呼ばれていました)
てんかん発作の原因がMRI検査や脳脊髄液検査といった検査で脳の構造に異常(病気)が見つかるタイプのてんかんです。猫のてんかん発作では約半数がこの構造的てんかんです。この原因となる病気には脳の奇形、脳炎、脳腫瘍、血管障害、脳の外傷などが挙げられます。
頭蓋外の原因
発作を起こす原因が頭の外にあるタイプです。この場合は「てんかん」とは言わず、「反応性発作」や「急性症候性発作」と言います。低血糖や肝臓疾患、腎臓疾患、ホルモンや電解質の異常、熱中症など、代謝性疾患と呼ばれる病気により発作が引き起こされます。その他にも毒物や薬物の摂取(中毒)により発作がみられることもあります。
これらの病気がないか調べるために血液検査や尿検査、レントゲンなどの画像検査を行います。

てんかん発作の治療

てんかん発作に対する治療は、てんかんが起こる原因によって少しずつ対処が違います。
特発性てんかんでは、抗てんかん発作薬と呼ばれるタイプのお薬で内科的に治療していきます。基本的には一生涯続けていくことになります。抗てんかん発作薬による治療を始めるタイミングは次項の通りです。
構造的てんかんでは、抗てんかん発作薬によっててんかんが起こらないようにする治療と、てんかんが起こる原因となっている脳の病気自体に対する治療、この両方を行っていくことになります。ただし、全ての病気で必ず両方の治療が必要になるわけではありません。
頭蓋外の原因で発作が起きている場合、その原因に対しての治療を行うことで発作は治まります。
抗てんかん発作薬はいつ開始する?4)
抗てんかん発作薬を使い始めると、基本的には生涯内服を続けることになるため、いつから内服をスタートさせればいいのかは、ご家族にとって気になる点だと思います。次の項目のいずれかに当てはまる場合が、抗てんかん発作薬による治療を始める目安です。
てんかん発作が6ヵ月に2回以上の頻度である場合
群発発作(24時間以内に2回以上の発作が起こること)がある
過去にてんかん発作重積(1回の発作が5分以上続く、または1回の発作のあと、正常に戻らないまま次の発作が始まってしまう)を経験している
最近の4回の発作を見て、発作の来る間隔が短くなってきている(発作頻度が多くなっている)または1回の発作が重篤になってきている(強くなった、長くなった、回復しにくくなった)
発作の後の異常な状態(眼が見えない、徘徊している、攻撃的になる,など)が24時間以上続く,または危険(眼が見えずに怪我をする、人や家具を攻撃する、など)な場合
構造的てんかんと診断された場合
治療に使う抗てんかん発作薬は使い始めると生涯にわたって使う必要があります。また、定期的な検査や必要に応じての薬の増減などの調節もあるため、ご家族の負担は少なからず出てきてしまいます。ですので、上記の項目に当てはまっている場合は、ご家族と相談した上で治療をスタートするかを決めていきます。

また、抗てんかん発作薬を使うことで発作が完全に出ないようになる、という子はあまり多くありません。てんかん発作の治療は発作の頻度や重篤度をなるべく減らす、というのが一番の目的となります(少なくとも3ヵ月に1回以下の発作頻度が目標)。また、治療中でも発作が起きた時に備えて、発作を止めるための特別な処方をすることもあります。

もし発作が起きた場合、今後の治療の参考にもなってくるので、発作が起こった様子や時間、日付などをメモしておいてください。

さいごに

てんかん発作は、ワンちゃんネコちゃんが初めて経験した時にはご家族の方々にとっても非常にショッキングな出来事です。ここで述べたように原因も様々ありますが、しっかりと調べて治療を行っていくことで何年間も薬を飲みながら健康に暮らしているワンちゃんネコちゃんもたくさんいます。もし、てんかん発作と思われるような行動が見られた際には落ち着いて対応し、お早めに動物病院にいらしてくださいね。

てんかん発作が起きてしまった時の対応は、別の記事にて解説しておりますので、ご覧ください。
「発作が起きた!その時どうすれば?」
https://vets-line.jp/web/mitaka-vets/2320/inu/cat/neurological/epilepsyhandle
参考文献
1) 伴侶動物におけるてんかんの定義,分類および用語に関するIVETFコンセンサスレポート.https://shinkei.com/pdf/20170122_2.pdf
2) IVETFによるコンセンサス提案:犬におけるてんかんの診断的アプローチ.https://shinkei.com/pdf/20170122_3.pdf
3) Hamamoto Y, et al., BMC Veterinary Research 2016 12:248
4) IVETFによるコンセンサス提案:ヨーロッパにおける犬のてんかんの薬物療法.https://shinkei.com/pdf/20170122_4.pdf