thumbnail
痛みがなくなるとこんなにも変わる!猫の変形性関節症(診断・治療編)
前編では、猫の変形性関節症は、はっきりとした症状がでていなくても、実は関節の痛みを抱えているネコちゃんはとても多いことをお話ししました。
チェックシートの結果はいかがでしたか?どれか一つでも当てはまると変形性関節症の痛みをかかえている可能性があると言われていますので、まだの方はやってみてくださいね。

今回は後編、「猫の変形性関節症の診断と治療」について、お話ししたいと思います。
前編の「症状編」をご覧でない方は先にご一読いただくと理解が深まると思います。
前編はこちらから→https://vets-line.jp/web/mitaka-vets/2945/cat/osteoarthritis1

診断

変形性関節症の症状は痛みによって見られることが多いので痛みがあるのか、どこが痛いのかを探っていきます。ただし、ネコちゃんは健康な場合でも、そもそも診察台の上で触って調べられることを嫌がる子も多く、触診ではなかなか痛む部分や痛みの程度を知りづらいということがあります。

変形性関節症の確定的な診断を行うためには、レントゲン検査が必要となります。関節部分に石灰化や骨棘が認められる場合、変形性関節症であると診断します。また、前編の原因のところでお話した、何かきっかけとなるような他の病気がないかも一緒に調べます。
=自宅での動きの変化を動画に撮影し記録しよう=
ネコちゃんがイスやテーブルにジャンプする動作や、おもちゃで遊んでいる動作などを撮影しましょう。毎回、同じ動作を撮影しておくと動作の変化が比較しやすくなりますので、お勧めです。診察のときに見せていただくことで、診断の手助けとなることがあります!

治療

基本的には痛み止めの薬を使っていきます。

この変形性関節症は手術や薬でもとに治せる 病気ではないため、治療は痛みをおさえてあげることで本来の生活、運動ができるようにすることが目標です。きちんと治療することで、3歳ほど若返ったような動きができるようになることも多いのですよ。
従来は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)という痛み止めの薬が猫の変形性関節症に使われてきましたが、最近はソレンシアという名前の注射剤が新たな選択肢として加わりました。ソレンシアは、モノクローナル抗体製剤という種類の薬です。これまでの痛み止めとは違った作用機序で痛み止めの効果を発揮するため、猫や犬の肝臓、腎臓、消化器への負担を最小限に抑えることができます。また、注射の頻度は月に1回と、投薬の大変さもない点がポイントです。

猫の変形性関節症は治療してみて初めて、「うちの子には痛みがあったんだ」と実感される飼い主様が多くおられます。そのくらい、治療前後で動きに違いが出るネコちゃんも多いということです。

変形性関節症の猫:治療するとこんなにも行動に変化が!(動画)

悪化、予防のためにできること

変形性関節症は根本的に治療できる病気ではないため、痛みが悪化しないよう、病気がなるべく進行しないように心がけることも大切です。
ご自宅でできることとして、次のようなことを見直してみてください。
段差をなくす
関節に過度な負担は避けてあげてください
EPA、DHA、緑イ貝抽出物、グルコサミン、コンドロイチン硫酸が添加された食事を与える
これらは関節の健康をサポートし、活動量アップや運動能力の改善につながります

食器、水器の高さをあげる
肘や手首が痛む場合、頭を下にかがめて食事をするのが痛いこともあります。頭を下にせずに食べられるくらいの高さが、関節の負担にもならず良いでしょう

リハビリやマッサージ
適度な運動はとても大切です。動かずに生活していると、筋肉が落ちてさらに関節に負担がかかってしまいます。関節に負担をかけないような適度な運動を日頃から行うように心がけてみてください。どの関節が痛むのかによっても適切な運動やマッサージは異なりますので、スタッフに相談してくださいね。

体重管理
肥満により関節に負担がかかってさらに痛みが増している場合には、ダイエットをすすめることもあります。

さいごに

ご家族に思い当たるような症状がなくてもレントゲン写真を見てみると、ここの関節が患っていそうだね、ということもしばしばあるのがこの変形性関節症。
うちの子が運動しなくなったのは、もしかしたら…?と心当たりのある方、一度スタッフに相談してみてください。
ネコちゃんが猫らしく生活できるよう、サポートいたします!
参考文献
画像提供:日本大学 枝村 一弥先生
動画提供:ゾエティス・ジャパン株式会社