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ワンちゃんネコちゃんが口にすると危険なものとは?(食べ物以外)
人と動物は身体の仕組みが似ている部分が多くても、違った部分も持つ生き物です。普段私たちが食べている物や身近な物でも、動物にとっては有害なものもあります。私たちの身近なもので、良く知られているようなものから意外なものまで…知っているだけで中毒を未然に防ぐことができる場合もきっと多いはずです。

今回のお話はワンちゃんネコちゃんが口にすると中毒を引き起こしてしまうものについて、後編の「食べ物以外」のお話です。  前編「食べ物編」をお読みでない方は、あわせてお読みください。  前編「食べ物編」

薬(人の鎮痛剤や風邪薬)

特に人の薬で身近であり、犬猫にとって危険な成分はイブプロフェンアセトアミノフェンと呼ばれるものです。これらは人の市販の風邪薬に配合されている事も多いため、家の中に置いてある方も多いでしょう。犬よりも猫で感受性が高いため、猫の方が少量の薬でも中毒症状が出てしまう可能性があります。
イブプロフェンを飲んでしまうと、少量の場合は消化器症状や腎不全、大量になるとけいれんなどの神経症状や、死亡するリスクがあります。
アセトアミノフェンの場合、血液中の赤血球に含まれているヘモグロビンとくっつき、赤血球が酸素を運ぶのを邪魔してしまいます。(メトヘモグロビン血症と言います)

食欲が落ちたり吐いてしまったり、呼吸に関連するところに異常が起きてチアノーゼ(酸欠になり皮膚・粘膜の色が青紫色に変化)や粘膜の色が茶色くなる
、といった変化が見られます。また、肝臓の機能に障害が出る、顔や全身が浮腫む、低体温や高体温になるといった症状も見られます。
これらの薬物をワンちゃんネコちゃんが飲んでしまった場合、中には対応が早ければ治療薬によって症状を緩和できる可能性もあります。また、これらの成分がどれくらいの量含まれている薬を食べてしまったのか、薬を包んでいる包装も一緒に飲み込んでしまったか、なども重要です。
アセトアミノフェン中毒による結膜浮腫(目のまわり)
メトヘモグロビン血症による舌の異常(チアノーゼ)
それぞれの中毒量
イブプロフェン中毒量:犬25mg/kg〜、猫12.5mg/kg〜1)2
アセトアミノフェン中毒量:犬50mg/kg〜3)、猫 10mg/kg〜4)

タバコ(ニコチン中毒)

タバコに含まれるニコチンにより引き起こされる中毒です。紙タバコだけでなく電子タバコやニコチンガム、ニコチンパッチにもニコチンが含まれているため注意が必要です。

ニコチンは神経に働きかける物質です。ニコチンは水に溶けやすく、水に溶けると消化管からの吸収が増加するため、ニコチンの摂取後には飲水は避けるべきです。

中毒の症状は摂取して1時間以内に現れることもあり、少量の場合は興奮や震え、聴覚や視覚の障害、衰弱、けいれんが認められます。5)大量に食べてしまった場合は虚脱(脱力した状態)、麻痺、呼吸が止まるなどの症状がみられ、最悪の場合は死亡する可能性もあります。

タバコの外箱に記載されている量は吸入時のニコチン量であり、タバコの葉を誤食した場合には、1本あたりのニコチン含有量はおおよそ10mg/本と言われていますので注意が必要です6)
中毒量
犬の場合 :中毒量1mg/kg〜、致死量9.2mg/kg〜7)

植物

観葉植物や花、散歩中にある草花など、犬猫にとって危険な植物は実はとても多いです。今回その全てを紹介することはできないため、その中でも花びらを舐めただけでも危険なユリについて紹介します。

ユリ科の植物(オニユリ、テッポウユリ、ヤマユリ、カノコユリ、カサブランカなど)を口にすることで中毒が起こりますが、まだその原因物質はわかっておらず花粉や花びら、花が入った花瓶の水を舐めただけでも危険です。猫での感受性は高く、少量でも死に至る可能性があるため注意が必要です。8)

口にした場合、数時間程度で元気消失や嘔吐がみられます。一旦それらの症状は落ち着くことがあり、その状態のネコちゃんを見てご家族は、病院に行かずにこのまま様子を見て大丈夫だろうと判断してしまうことがあります。

しかしネコちゃんの体内に入った毒物は腎臓を壊し、その結果、急性腎不全が起こって死亡します。救命するにはなるべく早く処置することが必要です。

治療方法には輸液や活性炭、制吐剤、利尿剤などがあります。また、重度の急性腎不全の場合には透析が有効ですが、透析治療は今のところ限られた病院でしか受けられません。

尿が全く作られなくなった(乏尿・無尿)場合には予後が悪く、透析治療をしても効果がない場合もあります。また、命は助かっても慢性腎不全となり、生涯にわたって治療が必要なこともあります。

有機リン

有機リンは殺虫剤や除草剤に一般的に使われている成分ですが、犬猫にとっては非常に危険な毒物です。舐めることで身体の中に入ってしまうのはもちろんですが、皮膚を介して体内に入ってきます。庭で遊んでいた、散歩から帰ってきたら様子がおかしい、といった外から帰ってきた後に症状が現れることも多いです。

嘔吐や下痢、よだれ、縮瞳(瞳孔が縮む)や神経症状である麻痺や痙攣(けいれん)などが現れ、重症の場合は死亡するリスクもあります。

解毒する薬があるため、異変に気づいたらすぐに病院を受診し、心当たりがある場合は獣医師に話してください。

防水スプレー

防水スプレーは私たちの生活の中で使う機会も多いかと思います。とても便利なものですが、実はこの防水スプレーによって人や動物に中毒症状が起こることがあります。

防水スプレーが原因で中毒が起こると元気消失、嘔吐、食欲低下、頻呼吸や呼吸困難が見られます。この症状は防水スプレーを吸い込んですぐよりも翌日に悪化することも多く、気づいたらすぐに病院に連れてくることが非常に重要です。

解毒剤は存在しないため、肺のダメージが回復するまで酸素療法や気管支を広げる薬などを使って対症療法をおこなっていきます。

さいごに

いかがでしたか?以上が食べ物以外で中毒を引き起こすものの紹介でした。

今回紹介しなかったものの中にも動物にとっては危険なものはたくさんあります。私たちにとっては身近な物でも、動物にとっては危険なものがある、ということを知ってもらえたら、と思います。ワンちゃんネコちゃんは何が食べてはいけないものなのか自分で判断できませんし、食べてしまったものも私たちに話してくれません。危険なものはワンちゃんネコちゃんの触れる範囲の場所には置かない、というのがとても重要です。

もし万が一、危険なものを食べてしまった場合は、何を、どのくらいの量を、いつ、食べてしまったのかをできる限り把握して、早めに動物病院を受診してくださいね。
参考文献
1)Meadows I., Gwaltney S., The 10 most common toxicoses in dogs,2006. Vet Med 101: 82-90
2)Dunayer EK., 2004. Vet Med 99: 580-586
3)Harvey JW, French TW, Senior DF: Hematologic abnormalities associated with chronic acetaminophen administration in a dog, J Am Vet Med Assoc189:1334-1335, 1986.
4)Aronson LR, Drobatz K : Acetaminophen toxicosis in 17 cats, J Vet Emerg Crit Care 6:65-69,1996.
5)Nicole C. Hackendahl, Colin W. Sereda, 2004. Veterinary Medicine: 218‐224
6)稲葉 洋平 et al 国産たばこ銘柄のたばこ葉に含有されるニコチン,たばこ特異的ニトロソアミンと変異原性測定. 日衛誌 (Jpn. J. Hyg.),68,46–52(2013)
7)Thomas E Novotny et al., 2011. Tobacco Control 20(1): 17-20
8)Berg RI. Et al., 2007. J Vet Intern Med 21:857-859