“アレルギー”と聞くとどんなものをイメージしますか?
人での卵や小麦、甲殻類など…食べ物に対するアレルギーを思い浮かべる人が多いかもしれません。ワンちゃんにも食べ物に対するアレルギーはあるのですが、今回はワクチンのときに気をつけたい、ワクチン接種後のアレルギーについてのお話です!
ワクチン接種後のアレルギーって
ワンちゃんのワクチンと言えば狂犬病予防接種、混合ワクチンがありますね。
ワクチンが製造される過程で、培養液、細胞成分、安定剤、アジュバンド(免疫の効果を高めるためのもの)などの成分がどうしても必要です。これらの成分に対して過剰な免疫反応が起きることを“ワクチン接種後のアレルギー”と呼びます。
ワクチン接種後のアレルギーは大きく2種類、即時型アレルギーと遅延型アレルギーに分けられます。
即時型アレルギーワクチンを打った後すぐに起こる急性かつ全身性のアレルギー反応です。アナフィラキシーショックとも呼ばれ、ぐったりする、血圧が低下する、脈が早くなる・弱くなる、チアノーゼ(粘膜蒼白)、呼吸困難、流涎、体温低下などが症状として現れます。多くは15分以内に見られます。
こういった症状はワクチンを打ったあと数分程度で症状が出てくることが多く、命に関わる状態なので早急に対処する必要があります。
遅延型アレルギーアナフィラキシーと比べると軽度な反応ですが、顔がパンパンに腫れたり(ムーンフェイス)、皮膚の赤みや痒み、接種部位の腫れ、発熱、下痢、嘔吐、食欲低下、元気消失などが見られることがあります。
これらの症状はワクチンを打ってから数時間以内に見られることが多いですが、まれに数日経ってから起こることもあります。多くは5日以内に見られます。
では、ワクチン接種後にどのくらいの頻度でアレルギーは起こるのでしょうか?
犬のワクチンに関しては、アナフィラキシーショックが起こる確率は混合ワクチンでは10万頭あたり0.913~1.95頭、狂犬病ワクチンでは10万頭あたり0.292頭であると言われています1)。(つまり、混合ワクチンは10万頭に1~2頭、狂犬病ワクチンは35万頭に1頭の割合ですね。)
割合をみてみると多くはないので非常にまれであることが分かると思いますが、起きる可能性がゼロではないため、注意したいですよね。
ワクチン接種後のアレルギーが起きたら
アナフィラキシーショックが起きた場合は、すぐに対処しなければいけません。血圧が下がり循環が落ちていることに対して点滴、チアノーゼや呼吸困難に対しては酸素吸入、その他にアドレナリンやステロイド剤など薬剤の投与、これらを組み合わせて治療します。
ワクチン接種後のアレルギーに対してできること
感染すると重症化しやすく致死率が高い感染症を、ワクチンによって予防できるという点や、ワンちゃんを予防接種で病気から守ることで、他のワンちゃんに病気を広めないという点からワクチンを接種することをすすめています。
当院では混合ワクチンを接種した後15分は院内で過ごしていただき、アナフィラキシーが出た場合に迅速に対応できるようにしております。ワクチンを打った日はいつもとは違うおでかけなどは控え、おうちでのんびりと過ごせるようにしてあげてくださいね。もし帰宅後に体調の変化が見られた場合、当院までご連絡ください。
ワクチン接種後のアレルギーを防ぐ方法は?
残念ながら、ワクチンを打つ前にアレルギー反応が起こるかどうかを判断する方法はありません。アレルギー反応が起こることはまれですが、もし起こった場合は対処する必要があります。また、過去にワクチン接種後にアレルギー反応が起こったことがあるワンちゃんは、再度発症する可能性が高いため、ワクチン接種前にアレルギーが起きにくいお薬を投薬することがあります。もし過去にアレルギー反応が起こったことがある場合は接種前に必ずスタッフにお知らせください。
さいごに
ワクチン接種後のアレルギーのことを少し頭の片隅においておくと、もし体調に変化があった場合に、“もしかしてアレルギー反応かな??一応病院へ連絡してみようか” と思え、適切に対応できるかもしれません。ワクチン接種に関して分からないこと、不安なことは何でも私たちに聞いてくださいね。