言葉を話せないワンちゃんネコちゃんだからこそ、身体が教えてくれる異常サインはなるべく見逃さないようにしたいですよね。
特に食欲、運動、排尿・排便など毎日の日課になっているものが突然、いつもと様子が違ったら・・?
それはもしかしたら病気のサインかもしれません。今回はご家族も変化に気づきやすい、“おしっこの色”についてお話します。

尿の異常な色は大きく分けて、赤色~褐色、暗黄色~オレンジ色、混濁、薄い色の4パターンです。
① 赤色~褐色の尿
頻繁に見られるのがこの赤色の尿です。ただ、赤色の尿すべてが血尿というわけではありませんよ。赤色の尿もいくつかの原因に分けられます。
血尿の色赤く見える原因としてよく見られるのが血尿であり、尿の中に赤血球が混じっている状態を言います。
血尿は尿路と呼ばれる、尿が作られて排泄されるまでの通り道(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかで出血しているとみられます。
血尿が起こる原因には感染、結石、炎症、腫瘍、創傷などが考えられます。

血色素尿血色素尿とは、赤血球が身体の中で壊れてしまい、その赤血球の中にあった色素(ヘモグロビン)が混じった尿であり、ヘモグロビン尿とも言います。
見た目では血尿との区別はつきません。原因は赤血球が壊れる(溶血する)病気であり、以下のものが挙げられます。
寄生虫感染症バベシア症(犬)、レプトスピラ症(犬)、ヘモバルトネラ症(犬猫)
その他免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、低リン血症、播種性血管内凝固(DIC)、犬糸状虫(フィラリア)の多数寄生や大静脈症候群、微小血管障害など
このように血色素尿がみられるには色々な病気が原因として考えられるため、尿検査だけでなく血液検査などの詳しい検査によって、病気の診断を行います。
ミオグロビン尿ミオグロビンとは筋肉中の色素であり、筋炎や挫傷、長時間の痙攣などによって筋肉が損傷を受けてミオグロビンが尿中に混じることがあり、それによって赤色の尿となります。
② 暗黄色~オレンジ色の尿
ビリルビン尿赤血球の色素であるヘモグロビンが分解されてできるのがビリルビンです。
このビリルビンは、普段は肝臓や胆管の中を流れています。ビリルビン量が過剰になってしまったり、肝臓の機能が悪くなる、胆管の通り道が塞がってしまう、などの異常が起こると、ビリルビンがあふれ出して腎臓に流れ、尿の中に混じります。
具体的には赤血球が壊される溶血性の病気、肝炎、胆管の閉塞(結石や炎症、腫瘍など)などが起こるとビリルビン尿が見られます。
ちなみに、犬では腎臓でビリルビンを産生することができるため、正常でも尿中にビリルビンが含まれることがありますが、猫では通常ありえません。猫で尿中にビリルビンが存在する場合には詳しい検査をした方が良いでしょう。1)
その他ビタミン剤を摂取した場合に尿色が変わることがあります。特にビタミンB2の摂取で尿がオレンジ色になることが多く、点滴にビタミンを添加する場合もあるため尿色が変わるかもしれませんが、問題ありません。

③ 混濁した尿
混濁なので色とは少し違いますが、尿の外観上の変化として、とても重要です。
尿が混濁している場合、尿の中に結晶や細菌、腫瘍細胞などが混ざっている可能性があります。
④ 薄い、透明に近い色
正常な尿の色に比べて尿の色が薄い場合も、病気が隠れていることがあります。
これは比重が低い尿(低比重尿)と呼ばれ、尿がきちんと濃縮されない腎疾患や、ホルモンや尿崩症などといった、多尿の原因となる疾患がある可能性を考えます。

さいごに
今回は尿の色についてお話しました。
尿の色だけで診断を下すことはできませんが、色だけでも可能性のある病気を考えることはできます。ここから詳しい尿検査や他の検査を行い、原因疾患を探っていきます。
もし尿色が少しおかしいかもしれない!と思った時は一度相談しに来られることをおすすめします。
参考文献
1)Text book of Veterinary Internal Medicine 第7版 p1622