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猫のワクチンって何が防げるの?
大切なネコちゃんのために、定期的にワクチン接種を受けさせている方も多いと思います。
もしかしたら動物病院で言われたから何となくワクチンを打っているけど、どんな病気を予防できるの?本当に必要なものなの?と感じている方もいるかもしれません。

この機会に猫の混合ワクチンについて、少し知識を深めてみませんか?

ワクチンのタイプについて
すこし難しい話ですが、感染症の中には死亡するリスクが高かったり感染力が強いものもあり、そのような感染症に対するワクチンは生活環境にかかわらず、すべての猫に接種することが推奨されています。このタイプのワクチンをコアワクチンと言います。一方で、生活環境や流行状況によって接種が勧められるタイプのワクチンをノンコアワクチンと言います。

ワクチンで予防できる感染症の種類

ここからはワクチンで予防できる感染症の種類について解説していきます。たくさんあるので大変ですが、普段予防接種しているワクチンがどんな病気を予防してくれているのか、興味のあるところを読んでみてください。

コアワクチン

猫ウイルス性鼻気管炎
猫風邪とも言われる、猫ヘルペスウイルス(FHV-1)による感染症です。このウイルスは感染した猫の鼻水や目やにから他の猫へ感染します。

感染すると鼻水やくしゃみ、目やにや結膜炎が見られます。他の感染症でも目やになどの症状は見られますが、眼の表面にある角膜と呼ばれるところにまで影響がでた場合、角膜炎や角膜潰瘍(角膜の表面が溶ける)になるのが、このヘルペスウイルスの特徴です。これらの症状は1~2週間程度で治まりますが、仔猫では重篤になることもあります。

このヘルペスウイルスは一度感染すると回復しても体の中にウイルスを保有する状態(キャリアと呼びます)となり、その猫がストレスを受けたり、免疫が低下するとウイルスが再び活性化して症状が再び現れます。
猫カリシウイルス感染症
カリシウイルスも、感染した猫の鼻水や目やにから他の猫へ感染します。感染猫の鼻水やくしゃみに含まれるカリシウイルスが口や鼻、粘膜から侵入することで感染が成立します。

カリシウイルスにはさらに様々な細かいタイプのウイルスが存在するため、症状も多様性があります。典型的な症状は流涎(よだれ)を伴った口の中に潰瘍ができるものであり、これは慢性口内炎に関連する可能性があると言われています。口内炎や舌炎が起こることもあります。

また、猫ウイルス性鼻気管炎のようにくしゃみや鼻水、流涙もみられますが、症状は軽度です。他にも激しい発熱、食欲不振や肺炎、関節炎などの症状があり、肺炎になると亡くなってしまう場合もあります。回復した後も生涯ではありませんがウイルスを排出するため、周りの猫への感染に注意が必要です1)
猫汎白血球減少症
猫パルボウイルスによる感染症であり、感染すると食欲が落ちたり、発熱、激しい嘔吐や下痢が見られ、重度の脱水が引き起こされます

成猫でも感染すると重度の症状がみられますが、とくに子猫では重症化しやすく死亡率が高いのに加え、感染力がとても強いため注意が必要です。感染した猫の糞便、ケージや食器、さらにはご家族の服や履き物からも感染が広がるため、感染猫と同居している猫はもちろんですが、室内暮らしの猫も外からウイルスが持ち込まれて感染するリスクがあります。

また、このウイルスは環境中で数ヶ月生存する、一般的な消毒薬では効果がないと言われているところも気をつけなければいけません。妊娠中の猫が感染すると、流産や死産などを引き起こすことがあります。

ノンコアワクチン

猫白血病ウイルス感染症
猫白血病ウイルス(FeLV)の感染経路は唾液、鼻水からであり、猫同士の喧嘩や毛づくろい、同じ器から食事をすることで感染します。ウイルスが体の中に入ってくると急性の発熱や下痢などが現れたりウイルス血症(血液中にウイルスが存在する状態)が持続する猫がいる一方で、感染を排除することができる猫もいるようです。これはウイルスの種類や量、ウイルスが体に入ってきた時の猫の年齢や免疫状態によって決まります。

感染した場合、症状が現れる猫と無症状の猫がいます。症状が現れる猫の場合、数年以内に腫瘍(主にリンパ腫)、貧血、免疫の低下に伴うさまざまな症状が認められ、完治することは難しく最終的に亡くなってしまいます

猫白血病ウイルスは屋外飼育の猫の方がより感染する機会が多いため、外に出る猫はワクチンを接種する方が良いでしょう。また、すでにネコちゃんと暮らしていて、新たにネコちゃんを迎え入れる場合は、ネコちゃん同士を触れ合わせる前にこの感染症の有無を検査することをおすすめします
猫クラミジア感染症
クラミジアはくしゃみを伴った、重度の結膜炎を引き起こす細菌です。致死的なものではないため、多頭飼いや猫同士の接触が多い場合にはワクチンを接種すると良いでしょう。

以上が猫のワクチンで予防することができる感染症です。猫のワクチンは、注射1つにいくつかの種類のワクチンが混ざっているため、混合ワクチンと呼びます。混合ワクチンは色々なメーカーで取り扱いがあり、その子の年齢や生活環境に応じてワクチンの種類を選択します。

さいごに

混合ワクチンを接種することで、これだけの種類の感染症からネコちゃんを守ることができます。中には感染力が強く、重症化する感染症もあるため、普段から気をつけていたとしてもウイルスが持ち込まれることがあるかもしれません。そんな時でもネコちゃんの感染を防ぐことができる、もしくは感染しても症状が軽くすむのがワクチンの効果です。

ただ注意が必要な点として、ごくまれにワクチンの副反応がでてしまう子がおり、接種直後に見られるアナフィラキシーでは血圧低下やチアノーゼが認められます。また、接種後少し時間が経過してから嘔吐や下痢、顔が腫れたり、身体のかゆみが見られることもあります。

また、ワクチンを注射した部分が腫れてしこりができることがあります。ほとんどの場合は自然に引いていきますが、ごくまれにワクチン接種部位肉腫と呼ばれる悪性の腫瘍ができることがあり、この肉腫はワクチンを接種してから4ヶ月~3年程後に生じることが多いとされています2)

ワクチン接種の副反応が見られた場合にはすぐに獣医師が対応できるように、接種後は少しの間院内で様子をみたり、当日は自宅でのんびりさせてあげると良いでしょう。また、ワクチンは適切なタイミングで接種しなければ効果が不十分なこともあり、その子に合ったワクチンのプログラムを組むので、ぜひ相談へいらしてください。
参考文献
1)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p948
2)Katrin Hartmann et al., 2015. J Feline Med Surg 17(7): 606-613