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にゃんこの脱毛。。。心因性脱毛のこともあります
ネコちゃんにハゲができたことはありませんか?
そのハゲ、もしかしたら心因性脱毛と呼ばれる病気かもしれません。

心因性脱毛とは、ストレスを感じることによって皮膚を執拗に舐めることで毛が短くなる、抜ける、皮膚に炎症が起こることを言います。私たち人間もちょっとイライラしたり、ストレスがかかると、痛くもないのに爪をかじったり、かゆくないのに頭皮を掻いたりいじったりすることがありますよね。

この爪をかじる行動が過剰になって、爪が半分になってしまうまでかじり続ける、過剰にかじってしまった場合と同じような状態、と考えると分かりやすいと思います。
猫はもともとグルーミング(毛づくろい)をする動物なので、一生懸命グルーミングしていた場合に、正常な範囲なのか、過剰になめている行動なのか、見分けがつきにくいです。
皮膚をなめて脱毛した場合に、これは皮膚病なのか、ストレス性なのか、どうやって見分けたらよいのでしょうか?

今回はストレスから体をなめすぎて自分で脱毛させてしまう、心因性脱毛についてのお話です!

猫で脱毛が起きる原因

脱毛や皮膚炎が起こる原因には次のような病気があります。
皮膚の感染症(外部寄生虫・真菌)
アトピー性皮膚炎
アレルギー(ノミ・食物)
腫瘍
免疫介在性
心因性脱毛

ストレスで脱毛していることを突きとめる方法

実は、ネコちゃんの様子を聞き皮膚の状態を見ただけでは、“ストレスが原因です”と判断することはなかなかできません。

まずは動物病院で皮膚の状態を確認し、細菌などの感染がないか、寄生虫はいないかなど必要な皮膚検査を行います。また、年齢によって起こりやすい皮膚病なども考えながら必要に応じて血液検査なども行って、原因となっているものを突きとめていきます。

最初はストレスが原因である心因性脱毛以外の病気を疑って検査し、その検査結果に応じた治療を行います。治療しても良くならない場合に初めて、ストレスからの理由も関係がある可能性が高い、と判断します。

また、心因性脱毛と感染、アレルギーなどが併発して症状が見られることもあり、この場合も心因性脱毛以外の治療をまず行い、それでも完全に治らない場合に心因性脱毛に辿り着きます。

このように、心因性脱毛は一度の検査ではなかなか診断できず、検査を繰り返しおこなったり治療の反応を見ながら“心因性脱毛かもしれない”と判断していくことになるのです。

ストレス度チェック

心因性脱毛の原因は“ストレス”です。

あなたのネコちゃんはストレスを感じていませんか?
是非この機会にストレス度をチェックしてみましょう!
食事
ご飯や水は落ち着いて食べられる場所に置いているか
運動
キャットタワーやキャットウォークの設置、一緒に遊ぶなど、運動不足や触れ合い不足になっていないか
寝床
登れて休める場所、隠れて休める場所、ふかふかのベッドはあるか
トイレ
トイレは十分な大きさか(猫の頭からお尻までの長さの1.5倍以上が理想)、汚れていないか、猫砂は好みのものか、落ち着いて排泄できる場所に置いてあるか、他の猫と共用していないか(多頭飼育の場合)
環境の変化
引っ越しや模様替えをしたか、家族が増えたか(減った)、来客があったか、近所で工事などの音や振動が気になる変化がないか
十分に遊んでいる?
「たいくつ」もストレスになります。十分にネコちゃんと遊んであげてくださいね。猫じゃらしで遊ぶだけでなく、かくれんぼ、ボール投げ、なんでもよいです。あまり活発ではない子は、一緒にまったりしながらマッサージをしてあげたり、芸を教えて頭を使わせるとよいでしょう。

退屈な時間帯には一人で遊べるように知育トイ」「知育玩具」「パズルフィーダー」などと呼ばれる、フードを隠しておもちゃを攻略しながらフードを食べるおもちゃを与えたり、フードを隠して宝探しをさせたり、長い時間遊べるようなおもちゃを与えてもいいと思います。
他の猫との関係
2頭以上のネコちゃんと暮らしているご家庭の場合、同居のネコちゃんとの関係はいかがですか?
一人になりたいときにはゆっくり一人で休めるのか、食事は無理に一緒に食べるような環境なのか?トイレは別の場所にあってプライバシーが保てるのか、寝床の位置など考えてあげましょう。

同居のネコちゃんがどれくらい仲良しか、一緒に寝ているのか、バラバラなのか見てみます。お互いに距離を保って生活している場合は、常に距離が保てる環境づくりが大切です。

今挙げた項目の全てが、全てのネコちゃんに当てはまるわけではありません。
ストレスの感じ方もその子によって違いますが、もし気になる項目があればネコちゃんのストレス軽減のために改善してあげてくださいね。

心因性脱毛の治療

根本的な解決方法は“ストレス源をとりのぞく”ことです。

舐めることで生じた皮膚炎や痒みに対してはそれに応じた内服薬・外用薬を使い、物理的に舐められないようにエリザベスカラーや服を着せてもらうこともあります。ただし、カラーや洋服がストレスになってしまう可能性も大きいため、皮膚の状況をみて装着の必要性を獣医師と相談しましょう。

ご家族が日頃からネコちゃんと遊ぶことが一番の治療です!おもちゃや知育トイを使って体を動かし、脳トレをして、ストレスを軽減させてあげてください。

ストレスからくる過剰な掻痒行動は、人の強迫性障害と似ている「常同障害」という病気の可能性もあるため内服薬を使って治療する方法や、抗不安効果のあるサプリメントや合成フェロモンによってストレスを和らげる方法もあります。しかし、治療で一番大切なのは、ネコちゃんの環境がその子にとって適切か、十分に遊べて、ちゃんと休めているのかであり、薬、フェロモン、サプリだけでは治療は完成しません。
合成フェロモンって?
合成フェロモンとは猫用フェイシャルフェロモンF3類縁化合物のことです。
猫が慣れ親しんだものや人に自分の頬をすりすりしているのを見たことはありませんか?
頬をすりすりしている時に分泌されているフェロモンを人工的に作りだしたのが、この合成フェロモンです。
この合成フェロモンによって猫に安心感を与えることができ、不安感やストレスの軽減が期待できます。効果はその子によって違い即効性ではないことが多いですが、気になる方は病院のスタッフまで声をかけてください。

さいごに

心因性脱毛は決して多くはない病気ですが、診断するまでに時間がかかります。なるべく早く異変に気付くためにも、お腹や内股など意外と気付かない場所を舐めて脱毛している子もいるので、スキンシップの一環としてちょこちょこ体をチェックしてみてくださいね。

ネコちゃんの皮膚の痒み・脱毛にお困りの方は、ぜひ当院に相談してください。