人と同じように、犬猫でも最近「肥満」が問題視されるようになってきました。見た目がぽっちゃりしていて何となくかわいいし、元気にしているから、と思われてしまうこともありますが、肥満は病気(栄養性疾患)であり、肥満そのものが様々な病気のリスクになることも報告されています。今回はそんな肥満についてお話します。
体重は食事などからとる摂取カロリーと基礎代謝や運動によって消費される消費カロリーのバランスで決まります。この摂取カロリーが消費カロリーよりも多い状態が続くと、肥満になります。
二次性肥満について
肥満には、先ほどの摂取カロリーが消費カロリーよりも多いことによる肥満だけでなく、二次性肥満と呼ばれる肥満もあります1)。これは、代謝に関連する病気があり、その病気による影響で肥満になる、というものです。代表的なものにはホルモンの病気として副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症があります。また、食欲が増える作用がある薬を服用している場合にも二次性肥満は起こります。太っている場合にはこういった病気によるものも可能性として考えておく必要があります。
ちょっとしたおやつが実はすごいカロリーに?
摂取カロリーと消費カロリーのバランスといいましたが、実際には室内で暮らしているワンちゃんネコちゃんが中心であることを考えると、「消費カロリーが少ないこと」よりも「摂取カロリーが多いこと」に問題があることがほとんどです。摂取カロリーが多いことの理由にはフードの与えすぎとおやつの与えすぎの二つが考えられますが、実は後者のおやつは要注意です。
人の感覚でおやつを与えてしまうと実はすごいカロリーになっていることをご存知でしょうか?わかりやすい例として、体重5kgのワンちゃんがクッキー一枚食べた場合、体重60kg程度の人がハンバーガー1個を食べるのに相当するカロリーになっているのです!
ついついかわいいから、と人の食べ物を与えてしまうと摂取カロリーはどんどん増えてしまうので注意が必要です。
肥満の何がいけないのか?
肥満である犬猫は様々な病気を引き起こすリスクがあります。以下に肥満と関連する疾患の例を挙げます。1)
運動器疾患 体重の負荷がかかるため、関節疾患や前十字靭帯断裂、椎間板ヘルニアなどのリスクがあります。
呼吸器疾患 特に小型犬では気管虚脱という、呼吸する時の空気の通り道である気管が潰れてしまい、呼吸がしづらくなる病気と関連があります。肥満があるとこの病気が悪化しやすく、呼吸が苦しくなりやすいので注意が必要です。
内分泌、代謝性疾患 猫では肥満が糖尿病の危険因子とされています。また、肥満猫は肝リピドーシスという肝臓に脂肪が過剰に蓄積する病気を発症しやすいです。犬では肥満により高脂血症を引き起こすリスクがあります。高脂血症は詳細なメカニズムはまだ分かっていませんが、膵炎の発症につながると言われています。
寿命との関係 他にも肥満の犬は肥満でない犬と比べて寿命が短くなるということも分かっています。
このように、肥満はそれ自体が直ちに命にかかわるような病気ではありませんが、多くの疾患のリスク要因となることが分かっています。
うちの子肥満…?そんなときは
BCS(ボディーコンディションスコア※ダイエットの記事に詳しい説明があります!)のチェックをしてみて、あなたのワンちゃんネコちゃんの体型はどうでしたか?BCSが7(5段階の場合は4)を超えると肥満体型です。
今まで気にしてなかったけど、うちの子肥満だったんだ…という方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合はぜひダイエットに取り組んでみてください。
ただ、自己流でのダイエットは危険なこともあります。例えば、急激なダイエットによってワンちゃんネコちゃんに大きなストレスを与えてしまったり、必要な栄養が十分摂取できなくなってしまうことも。ですから、適切な減量計画を立てて取り組むのがとても重要です。
太っているかな?と気になった場合はまずはお気軽にご相談ください。ワンちゃんネコちゃんに適したダイエット用のフードもありますので、無理なく始めていきましょう。
参考文献
1)石岡克己, 2021. ペット栄養学会誌 24(1): 46-56