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その変化、病気のサインかもしれません~多飲多尿~
言葉を話せないワンちゃんネコちゃんだからこそ、身体が発している異常なサインは見逃さないようにしたいですよね。

特に食事、飲み水、排尿、排便、運動など日々の様子が突然あるいはゆっくり変化してきたら、もしかしたら病気のサインかもしれません。今回は“多飲多尿”についてのお話です。

どこからが多飲?多尿?

多飲多尿とは名前の通り、普段より多くの水を飲み、普段より多くの尿をすることです。
犬では、1日に体重1kgあたり100 ml以上の水を飲む多飲と判断され、50ml以上の排尿をすると多尿と判断されます1)。例えば気温の高い日や運動後に一時的に飲み水や尿が増えるのは自然なことですが、多飲や多尿が数日以上続くのなら、隠れている病気や異常に注意しなければなりません。

は犬よりも水を飲む量が少ない動物なので、1日に体重1kgあたり60 ml以上の水を飲むか、体重とは無関係に1日250 ml以上の水を飲むと多飲と判断されます。猫では1日に体重1kgあたり50 ml以上の尿を出すと多尿と判断されますが、これ未満でも、いつもより尿の量や回数が増えてきている場合は注意が必要です。
水を飲んで余計な水分や老廃物を尿として出す仕組みは、脳、心臓、血管、各種のホルモン、腎臓が複雑に関わることでバランスが保たれています。この仕組みのどこかが狂ってしまうと多飲多尿になることがあります。

飲み水や尿の量はどうやって測るの?

ワンちゃんでもネコちゃんでも、決まった量(たとえば500 ml)の水を器に入れておき、数時間〜半日ほど後に残った水の量を測って差し引きし、これを丸1日記録することで1日に飲んだ水の量が分かります。しかし、水をこぼしてしまう、すぐに新しい水に取り替えるよう要求する、蛇口から出る水を好むなど、飲み水の量を上手に測れないことはよくあります。
そんなときは尿の量を測るとよいでしょう。ペットシーツやおむつに排尿させて重さを測り、新品のペットシーツやおむつとの重さを差し引きすると尿の重さ(つまり量)が分かります。最近は尿の重さを自動で記録してくれる猫用トイレもありますので、普段からこのようなトイレに排尿することに慣らしておくと尿の異常に早く気がつけますよ。

こんなときは??
尿の回数が多い(頻尿)、尿をいつもと違う場所でしてしまう(失禁や問題行動)、といったことがある場合、尿が多くなったのかな?と思うかもしれませんが、必ずしも多尿であるとは限りません。ですので、飲み水の量を測るか、動物病院で尿検査をすることをおすすめします

飲み水や尿の量が測れないときは

飲み水の量も、尿の量もなかなか測るのが難しい場合がありますよね。そのときは、尿そのものを採って動物病院に持っていきましょう。ワンちゃんの場合は散歩中に排尿しているときに紙コップや皿などで受けるか、ペットシーツを裏返しに置いておき、排尿したらお弁当用のプラスチックの醤油差し(スーパーマーケットで売っています)に入れて密封します。

ネコちゃんの場合は尿を吸い込まずに通す砂を使ったシステムトイレが便利ですが、小さなスポンジに柄がついた道具で排尿中に直接取れるネコちゃんもいます。動物病院で尿検査をするときは、できるだけ排尿から6時間以内に、常温の尿を持参してください。
尿検査で飲水量や尿の量が分かるの?
尿検査で分かる項目のひとつに尿比重と呼ばれるものがあります。尿の濃さを尿比重と呼びますが、この尿比重は犬と猫でそれぞれ適正範囲が決まっています。

尿比重が適正範囲より低い(つまり尿が薄い)場合、とくにそれが何回も続く場合には多飲多尿であると考え、その原因となる病気や異常を探すことになります。また、尿検査をすることで、比重だけではなく、尿に異常に含まれているタンパク質、ブドウ糖、血液などの有無も判断できますよ。

多飲多尿の原因は?

多飲多尿はさまざまな病気や異常で起こるため、病気や異常に気づくきっかけにもなりやすいです。動物病院では尿検査や血液検査を行って病気や異常の有無をみきわめていきます。なお、多飲多尿といっても多尿によって喉が渇き、その結果多飲になる場合と、水を飲みすぎることで尿が増える場合があります

以下に多飲多尿の原因となる疾患を挙げました。1)2)
多尿から始まり、その後に多飲が起こるもの (多くはこのケース) 
慢性腎臓病、副腎皮質機能亢進症、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能亢進症、肝疾患、高Ca血症、低K血症、子宮蓄膿症、前立腺膿瘍、急性腎障害における多尿期、閉塞後利尿、褐色細胞腫、糖尿病、腎性尿糖、尿崩症、さまざま薬物

さいごに

多飲多尿にはさまざまな病気や異常が隠れている可能性があります。それに加えて、食欲がなくなってきた、痩せてきた、など他の症状がある場合は緊急性の高い病気、もしくは病気が進行している状態かもしれません。

多飲多尿はあるが元気、という場合は病気や異常を早期発見できるかもしれません。気になることがあればお気軽にご相談ください。
参考文献
1)Yvonne McGrotty., 2019. In Practice 41, 249-258.
2)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版