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猫でも要注意!フィラリア症、犬の病気だと思っていませんか?
フィラリア症は別名「犬糸状虫症」と呼ばれ、一般的には犬が気を付けなければならない病気として知られています。じつはこのフィラリア症、猫にもかかる病気であることは知っていますか?
今回は、猫のフィラリア症についてお話しします。

フィラリア症とは?

フィラリア症とは犬や猫、フェレットなどの多くの哺乳動物に、犬糸状虫(フィラリア)と呼ばれる寄生虫が心臓やその近くの血管に寄生することで、動物に色々な症状を引き起こす病気であり、このフィラリアは蚊によって運ばれてきます。フィラリアの成虫には雄と雌がいて、最長30cmにもなる大きな寄生虫です。1)

フィラリアが犬に寄生するまで

フィラリアは、幼虫が蚊と犬の体内で各発育段階まで成長し、成虫になります。
この成虫が体内で交配し、子虫を産むことでミクロフィラリアという幼虫をどんどん増殖させていきます。
そして、蚊が犬を吸血することで再び幼虫が拡散されていきます。

寄生する数が多い場合、200匹以上ものフィラリアが感染犬の体内にいると言われています。1)フィラリアに寄生された犬は血管や心臓、肺などがダメージを受けて、咳が出る、呼吸が荒い、動きたがらない、体重が減少するなどの症状が現れます。

犬と猫とでこんなに違う、フィラリア症

フィラリアは主にイヌ科動物に寄生して生活するため、猫への感染は起こりにくいです。ただ、全く感染しないというのではありません。ただ、猫がフィラリアに感染した場合、犬とは少し違う病態をたどります。

まず、フィラリアが猫の体内に入った場合、大半は猫の免疫反応により成長途中で死亡します。その死んだ虫体が肺で急性の炎症を引き起こし、咳や呼吸困難が見られます。このフィラリアが原因で起こる咳や呼吸困難を「犬糸状虫随伴呼吸器疾患」と呼びますが、その症状は他の呼吸器疾患の症状とよく似ています。

まれに猫の体内で成虫にまで成長すると、肺動脈に寄生して数年(3年以上との報告もあります2))生きます。その後成虫が死滅すると、肺で重度の炎症が起きたり、死滅した虫体が詰まることで突然死を招くことがあります。

フィラリアに感染しないために

猫のフィラリア症は特異的な検査が確立されていないのと、似たような症状を示す疾患が多いために確実な診断はとても難しいとされています。
また、フィラリアに感染してから治療することは、猫にとって負担がかかってしまい、リスクもあります。
そもそも、猫のフィラリア症は病気に気がつく前に、原因不明の突然死とされていることも多いのです。

これらのことを考えると、一番確実なのは感染する前に予防することですね。

フィラリアの予防薬は、体内に侵入してきたフィラリアの子虫を、成虫へと成長する前に駆虫する“駆虫薬”です。ですので、予防薬はフィラリアが体内に侵入するのを防ぐ、というものではなく、すでに体内にいる子虫を駆虫する働きをします。その後、また一ヶ月間で体内に侵入してきた子虫を駆虫する、というように月1回の予防が必要となるわけです。

さいごに

今まであまり猫のフィラリアに馴染みがなかった人もいるかもしれません。

驚きかもしれませんが、感染していた猫の3分の1近くが完全に室内で飼われていたとの報告もあるので、3)室内で飼っているからといって必ずしも安全というわけではありません。大切なネコちゃんを守るために是非しっかりと予防してあげたいですね。

当院では月末に一回ずつ背中につけるだけで、猫のフィラリアとノミダニ、消化管内寄生虫を一度に予防できるお薬を推奨しています。まとめ買いでお得に買えるセットもご用意しておりますのでお気軽にスタッフまでお声がけください。
参考文献
1) Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 Client Information Sheets Heartworm Disease
2) L Venco. Et al., 2008. Vet Parasitol 158(3): 232-7
3)Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p1378