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腸内フローラ検査
近年、人間の医学では腸内フローラ(腸内細菌)と様々な疾患との関連性が分かってきています。人間では色々な消化器疾患、糖尿病、高血圧、心臓病、動脈硬化、アレルギーを含む免疫介在性疾患、認知症うつ病を含む神経疾患などが含まれます。犬でも論文ベースでアトピー性皮膚炎、慢性下痢、てんかん、炎症性腸疾患、肥満など、猫では慢性下痢、慢性腸症、糖尿病、肥満、慢性腎不全などとの関連性が見つかっています。腸内環境、腸内フローラには非常に多くの機能があり、食べ物の消化吸収はもちろんのこと、感染症予防や免疫調整機能、栄養素の産生、精神的安定を導く物質の産生など色々な働きがあります。おそらく犬猫も人間と同じように、まだ分かっていない疾患の関連性も多数あると考えられます。
当院では以前より臨床現場において腸の健康の重要性を実感しており、腸内環境を乱れを引き起こす歯周病への治療の推奨、腸内フローラの状態改善を目指すプレバイオティクス、プロバイオティクス(いわゆる整腸剤)の使用、疾患を伴う犬猫に合わせた食事指導などを行ってきました。例を挙げると、アレルギー性皮膚炎、心臓病、腎臓病、免疫介在性疾患、慢性腸症などで、従来の治療薬に加えて腸内環境の改善をすることにより、時には治療薬の原料もしくは休薬することが出来るケースがあります。

腸内フローラ検査

腸内フローラ検査は、少量の便を検査センターに送ることで腸内フローラ検査を行います。犬猫が対象で、税込¥14,300となります。病院で採便することも可能ですし、ご自宅で少量の便を専用容器に入れて郵便発送もしくは当院にお持ちいただければOKです。
少量の便を提出することで、腸内細菌叢の多様性有用菌と有害菌のバランス、さらに個々の病気に関連する有用菌と有害菌を調べる検査です。
現段階の解釈としては腸内細菌の多様性(種類が多いこと)が多ければ多いほど動物は疾患が少なくなります。その多様性の評価、さらに病気に関連する有害菌や病気の予防を手助けする有用菌のバランスを検出します。腸内細菌の多様性があり、腸内フローラのバランスも問題なければ身体的に強く、腸内環境を悪くする要因(歯周病、運動不足、アンバランスな食事)だけ気を付ければ良いという判断となります。逆に腸内細菌の多様性が少なく、腸内フローラのバランスが悪い場合は、フードの選択、プレ・プロバイオティクスの使用、生活環境の改善など、いわゆる腸活を行い少しでも腸内環境の改善し、引き起こされる疾患の改善と予防を目指していきます。またプレ・プロバイオティクスにも色々な製剤があり、個々の個体や検査結果によって選択する事が出来るかもしれません。
現在はアレルギー性皮膚炎や免疫介在性胃腸炎などの免疫介在性疾患、その他胃腸疾患を慢性的にお持ちの犬猫にこの検査をお勧めしています。また、特に病気のない犬猫も、その時点での腸内フローラを把握し、将来的に出てくる疾患を予想、予防するためにこの検査を行うのも良いと思います。

腸内細菌の多様性

犬猫の腸内細菌の種類は1000-3000種類と言われています。腸内細菌の多様性とは、腸内細菌の種類がどれだけいるかということです。人間では3歳までの生活環境で腸に定着する腸内細菌が確定してしまいます。3歳までにどれだけの細菌を外界から取り込めるかにより、その多様性が変わっていきます。その後、生活環境(食事やストレス、運動不足、人では睡眠不足なども)や、加齢にともなって細菌叢の多様性は徐々に少なくなっていきます。多様性が多いと病気になりにくく、多様性が少ないと病気になりやすくなります。

有用菌と有害菌のバランス

有用菌の代表格としては、乳酸産生菌、ビフィズス菌、酪酸産生菌があります。有用菌は有害菌の増殖を抑える働きがあります。有用菌と有害菌のバランスが重要視されています。また疾患ごとの有用菌と有害菌を調べていきます。
有用菌は腸管内を酸性化し有害菌を抑える効果があります。
腸内細菌は、そのままでは消化できない栄養素の分解を手助けします。また腸内細菌が作り出す栄養素もあります。
腸は栄養素の消化吸収を行う臓器であります。必要な栄養素は吸収し、必要ないものもしくは有害物は吸収しない。また様々な病原菌の侵入を防がなければなりません。身体の外と中を繋ぐ関門でもあります。そのため腸管には身体全体の免疫細胞の約70%が集中しています。免疫細胞は腸管でトレーニングされ全身に派遣されていきます。よって腸内環境が良くないと免疫細胞の調節機能が悪くなり、免疫介在性疾患であるアレルギーなどの病気を引き起こすことになります。
腸は脳からの司令がなくても自ら判断し独自に働く機能があります。その中に存在する腸内細菌は、情動をコントロールするために使われる神経伝達物質(セロトニンやドパミン)を作っています。そのため第2の脳と言われています。人医学では認知症、自閉症、うつ病との関連性が分かっています。
当院では腸内フローラ検査を行っています。