当院における歯石除去手術、歯科手術について
歯石、歯肉炎、歯周炎というのは、ただ単に口が汚い、臭いなど、口腔内だけの問題ではありません。歯周病は歯垢が蓄積することで発症します。歯垢(細菌性プラーク)というのは細菌の塊で、これが原因で周囲に炎症を起こしていきます。まず歯肉に炎症を起こす歯肉炎となり、それが広がり歯を支える周囲の支持組織(骨や歯茎)に感染と炎症が広がっていきます。また歯垢は数日以内に歯石に変化し、この歯石は歯周病菌にとって非常に安定した環境となります。この歯石も歯周病菌の塊なのです。これら歯垢や歯石の歯周病菌の感染が支持組織を退行させていきます。支持組織を損失すると、歯と骨・歯肉に空間が生じ、歯石がさらに付きやすくなります。さらにその細菌がありとあらゆる臓器がダメージを与えていきます。口腔内の歯周病菌は当然のことながら食道、胃、小腸、大腸と消化器に入っていきます。消化器に潰瘍が出来たり、場合によっては癌が出来たりする可能性があります。また腸内細菌叢にダメージを与え、間接的に免疫や、神経系、腎臓、皮膚病など悪い影響を及ぼしていきます。口腔内の歯周病菌は呼吸器にも入ります。また歯肉の血管に入れば、腎臓や心臓にたどり着き、腎不全や心臓病を引き起こします。
歯周病の進行
ステージ1:歯肉炎
この段階の歯周炎では、殆どの場合、適切な歯科処置を行えば治癒する段階です。
ペリクル:歯の表面に唾液由来のペリクルという薄い膜が作られる。このペリクルは細菌にとってのエサになります。このペリクルに歯周病菌がくっつき増殖していきます。このペリクルは歯みがきなどで、落とすことが出来ます。
細菌性プラーク:ペリクルに潜む細菌が自分たちを守るためにバイオフィルムを作ります。この状態が細菌性プラークと呼ばれ、これが歯と歯茎の隙間に付着することで歯茎の歯肉が炎症を起こしていきます。この段階だと歯みがきだけで落とすのは難しくなってきます。麻酔下歯科処置をお勧めします。
歯石:細菌性プラークがカルシウムやリンを取り込んで石灰化し、歯石となります。歯石になるまでの期間は3-5日間と言われています。この歯石を除去するには、麻酔下歯科処置が必要となります。
ステージ2:初期歯周炎・支持組織の損失が25%以下
歯垢や歯石、それらに含まれる細菌、それらを原因とする歯周炎を放置すると、炎症が周囲組織に広がり、歯を支持する組織がダメージを受け、時間とともに支持組織が失われていきます。支持組織の損失が25%以下がステージ2となります。歯科処置を行っても、損失された組織はもう回復しません。ステージ3:中程度の歯周炎・支持組織の損失25-50%
歯周炎が広がり、その支持組織の損失が25-50%まで進行した状態です。ステージ3:重度の歯周炎・支持組織の損失50%以上
さらに歯周炎が広がり、その支持組織の損失が50%以上進行した状態です。ステージ2以降では、麻酔下で歯科処置を行っても残念ながらダメージを受けた支持組織は回復しません。歯が綺麗になっても支持組織が減ってしまうと、簡単に歯石が付くようになってしまいます。出来るだけステージ1の段階での歯科手術をお勧めしています。
ステージ3の治療例(犬)
まず歯石を超音波スケーラーで除去します。その後、ダメージが大きく修復が難しい歯は抜歯をします。その後オゾン水を使い洗浄し、半導体レーザーにより歯肉の殺菌を行います。過形成を起こした歯肉部分はレーザーで切除や焼却していきます。その後2種類のコンパウンドでポリッシングを行い歯の表面の細かいキズを滑らかにしていきます。これをしないとこれらの細かいキズを足がかりに新たな細菌感染を起こしやすくなります。退行してしまった歯茎は周囲の歯肉を整形し新しい歯茎を形成し、定着するように縫合します。

犬歯は歯石の細菌の影響で歯肉が上に退行してしまっています。

かなりの歯石と歯周炎がみられます。
ステージ1の治療例(犬)
歯石を超音波スケーラーで除去し、オゾン水で殺菌洗浄、レーザーを使い歯肉の殺菌をします。その後に2種類のコンパウンドとポリッシングで表面を磨いています。最後のポリッシングを行わないと、歯の表面に小さなキズが残り、そこを足がかりに細菌が繁殖しやすくなります。
ステージ1の治療例(猫)
ステージ1の治療例(犬)
手術日までの手順
予約:手術は予約制になっていますので、まずは手術の予約をして下さい。お電話でも結構です。
術前検査:手術の約1週間前に、術前検査を行います。基本検査として、血液検査(全血球検査+電解質検査+生化学検査[犬11項目][猫10項目])、心臓マーカー検査、心臓超音波検査を行います。何か症状がある場合、血液検査や心臓超音波検査で異常が見つかる場合は、追加検査をご提示する場合があります。犬:血液検査+心臓マーカー+心臓超音波検査=¥13,772、猫:血液検査+心臓マーカー+心臓超音波検査=¥13,420が基本検査となります。だだし、重度の歯周病の場合、レントゲン検査や腹部超音波検査、尿検査など追加検査が必要となる場合もあります。
絶食:前日の夜ご飯を最後に絶食をしていただきます。飲水はOKです。
手術当日:8:40-9:00にご来院いただきます。 手術当日~翌日までの流れ
8:40-9:00にご来院いただきます。簡単な診察を行います。
酸素吸入ケージに入り、術前に3-4時間の酸素吸入を行います。麻酔のリスクを下げるために非常に有効な方法です。
12:30-13:30:手術を開始します。生体情報モニターを接続し、まず鎮痛剤、鎮静剤、導入麻酔剤を静脈投与します。その後気管挿管し吸入麻酔で麻酔維持をしていきます。同時に静脈点滴を開始します。
人工呼呼吸器を接続、手術中は、心電図、血中酸素濃度、血圧、呼吸数、炭酸ガス濃度、麻酔ガス濃度、呼吸数などをモニタリングしています。
超音波スケーラーを使用し、歯石除去を行います。
歯周囲の感染壊死組織を取り除きます。感染が酷い場合は細菌同定・感受性検査用のサンプルを採取します。
歯周囲の支持組織がかなり失われている場合は、抜歯を行います。
除菌殺菌効果のあるオゾン水を使用し、口の中を洗浄します。
半導体レーザーを使い、歯周囲組織の殺菌と組織再生促進を促します。
歯肉の欠損が大きい場合、歯肉を加工して成型します。また歯周ポケットが深い場合、円周状に縫合糸を入れ歯茎を歯になるべく密着させる加工をする場合もあります。
抜歯を行った場合、必要に応じて歯茎の欠損部を成形加工し縫合します。
超音波スケーラーで傷着いた歯の表面を滑らかにするため、ポリッシング(研磨)を行います。これを行わないと歯の表面に付いた小さなキズが足がかりとなり、歯石や細菌が付きやすくなります。
最後にもう一度オゾン水で洗浄し終了となります。
術後も酸素吸入ケージに入ります。高齢の場合や、心臓、腎臓、肝臓、膵臓などに疾患がある場合は一晩入院します。
日帰りの場合は17:00-19:00、入院の場合は翌日の12:00前、もしくは16:00-19:00にお迎えに来ていただきます。
費用(税込)2026年3月1日(税込)
歯科手術はその程度、処置内容により費用が変わります。(軽度)~(重度)の大体の目安の費用を記載します。(軽度)は歯石処置、オゾン水洗浄、レーザー処置、ポリッシング、(重度)には歯石処置、オゾン水洗浄、レーザー処置、ポリッシング、抜歯、歯肉整形などが含まれます。
歯周病が中度~重度の場合、術前検査で追加検査が必要になる場合があります。レントゲン検査、腹部超音波検査、尿検査、血液凝固検査などがあります。
| 歯科手術 | 基本術前費用との合計 |
| 犬・5kg未満 | ¥39,600-57,200 | ¥53,372-70,972 |
| 犬・5-10kg | ¥44,000-61,600 | ¥57,772-75,372 |
| 犬・10-20kg | ¥47,300-64,900 | ¥61,072-78,672 |
| 犬・20-30kg | ¥55,000-72,600 | ¥68,772-86,372 |
| 犬・30-40kg | ¥62,700-80,300 | ¥76,472-94,072
|
| 猫 | ¥39,600-57,200 | ¥53,020-70,620 |
歯周病の状態によっては、細菌感受性検査をお勧めする場合があります。(¥11,000~)また歯肉に過形成がある場合、病理検査をお勧めする場合もあります。(¥16,500~)
術後に1週間程度の抗生剤・整腸剤を使用します。(¥2000~)
上記の費用以外に、別途、診察料が必要となります