thumbnail
“元気”に隠れている⁉ 猫の心筋症
あまり知られていないかもしれませんが、猫には“隠れ心臓病”が意外と多いんです。猫の心臓病といえば“心筋症”という病気が多いですが、ワンちゃんの心臓病と違って見つけるのが難しいことも多いんです。
今回は猫の心筋症について、ご家族にぜひ知っておいてほしいことをお話しします!

猫の心筋症って??

心筋症とは、心臓の筋肉に異変が起きてしまう病気です。

例えば、筋肉が異常に分厚くなると心臓がうまく伸び縮みできなくなります。その結果、全身へ血液をきちんと流せなくなる、といったことが起こります。

中でも猫ちゃんでは肥大型心筋症が多く認められます。
やっかいなことにこの心筋症、はっきりとした症状がないまま病気に気づかれず、やがてかなり悪化してから初めて診断される、ということがよくあるんです。
ある研究では、見た目は元気な猫のうち、29.4%(約30%‼)心筋症が見つかったということが分かっています1)
そんなに心筋症の猫がいるなんて、びっくりではありませんか?

この心筋症は歳をとっている猫ほどかかりやすい病気ですが、生後2ヶ月という小さな子でも心筋症だったケースもあります。

また、雑種の猫に多く見つかりますが、メイン・クーンやラグドール、ペルシャ、ブリティッシュ・ショートヘア、ノルウェージャン・フォレスト・キャットなどは、肥大型心筋症になりやすいと考えられていますよ2)

心筋症の症状

心筋症が進んでしまうと、うっ血性心不全や、心臓でできた血栓が全身の血管で詰まってしまう “血栓塞栓症という、命にかかわる病気を引き起こすことがあります。

早く気づいてあげないと、ネコちゃんにとってとてもつらい症状がでてきます。

うっ血性心不全のサイン
にはこんなものがあります。これらは、胸に水が溜まったり(胸水)、肺に水が溜まったり(肺水腫)することが原因です。
呼吸が速い、苦しそう、チアノーゼ(舌や歯茎などの粘膜が紫色になる)
食欲がない
元気がない
さらに、もし血栓塞栓症が起きていると、次のような症状も見られ、治療が遅れるとそのまま亡くなる危険性も高いです。
足が動かない、麻痺している(特に後ろ足が多い)
突然痛がる
麻痺した足が冷たい、肉球の色が悪い

こういった症状が出たときには、できるだけ早く動物病院へ連れてきてください。
でも実際には、心筋症は症状が出ないまま進行してしまうことも多いんです。残念ながら具合が急に悪くなって初めて見つかった、というケースも少なくありません。

猫の心筋症に早く気付くために

心臓の病気、と聞くと心雑音を思い浮かべる方も多いかもしれません。心雑音は聴診器ひとつで確認できるため、普段の診察でおこないやすい検査のひとつです。

しかし、残念ですが… 猫の心筋症=心雑音 ではありません。

じつは猫の場合、心雑音がなくても心筋症であることがとても多いです。症状のない心筋症の猫のうち、心雑音が聞こえるのは40%程度(半分以下‼)だと言われています3)

つまり、普段の聴診器を使った検査だけでは気付くことができない、ということです‼

じゃあどうやって心筋症を診断するの?

その答えはレントゲン検査、超音波検査を使った検査です。
特に”心臓超音波検査(心エコー検査とも言います)”で、心臓がきちんと働いているのかを詳しく調べることができますよ。つまり心筋症を見逃さないために、症状がなくても、定期的にこの心エコー検査を受けることをおすすめします!!

最近では、心臓病の存在を調べられる血液検査もあります。
ネコちゃんの性格などによっては超音波検査が難しい場合もありますので、気になる方は是非一度相談してくださいね。

猫の心臓病に“心常識”を。血液検査で診る心臓病https://komorebipetclinic.hatenablog.com/entry/2025/04/19/183958

参考文献
1)Payne J.R., Brodbelt D.C., Luis Fuentes. Cardiomyopathy prevalence in 780 apparently healthy cats in rehoming centres (the CatScan study). J Vet Cardiol. ; 17 Suppl 1: S244-57. 2015.

2)Luis Fuentes V., Abbott J., Chetboul V. et al. ACVIM consensus statement guidelines for the classification, diagnosis, and management of cardiomyopathies in cats. J Vet Intern Med. ; 34(3): 1062-77. 2020.

3)Christopher F Paige et al., 2009. J Am Vet Med Assoc 234(11):1398-403