
エルーラは、2024年11月に発売される新薬です。海外では数年前から販売されていました。
成分:カプロモレリン酒石酸塩
効能:慢性疾患に伴う食欲不振、体重減少の改善
用法:1日1回、決められた液量を投与
猫の体重減少と慢性疾患
体重減少は、慢性疾患の初期段階から始まっています。例えば・・・
慢性腎臓病
甲状腺機能亢進症
うっ血性心不全
がん論文によると
▷体重減少は慢性疾患が診断される3年前には認められ、病気の進行に伴って加速します。
▷慢性疾患がある場合、顕著な体重減少が認められる前から、除脂肪体重の減少(悪液質)が急速に生じることが一般的です。
体重減少の影響
体重減少が始まった慢性疾患の猫では、生存期間が短いことが分かっています。
除脂肪体重の減少は、体力、免疫機能、創傷治癒に悪影響を与えます。主成分カプロモレリンとは
食欲ホルモン「グレリン」と同様の働きを促すことで体重を増加させます
グレリンは、生体内に存在するホルモンで、食欲を増進したり筋肉量を増加させるなど様々な生理作用があります。
カプロモレリンは、グレリンの生理作用と同様の働きを促す選択的グレリン受容体作動薬です
①食欲増進(食餌量増加)
食欲増進
視床下部の受容体と結合して、食欲中枢を直接刺激します。
②体重増加
体重増加を刺激する代謝変化
脳下垂体の受容体と結合して、成長ホルモンの分泌を促進。成長ホルモンは、肝臓でインスリン様成長因子−1を刺激し、筋肉量を増加します。
上記①と②により、体重増加が期待できます。
有効性はどのくらい?
臨床試験において2週間以上投薬すると、3%以上の体重増加が認められました。

副作用などはどうか?
よだれが認められます。
投薬直後からよだれは垂れますが、数分で回復します。これは唾液腺にもグレリン受容体が存在するため、投薬による生理的反応と思われます。
そのため、投薬を中止する必要はないと考えています。
血糖値のわずかな上昇
血糖値の一過性の増加が認められましたが、血糖値の増加は次第に減少し、認められなくなりました。
費用は?
病気を直接治す/改善させる薬ではないため、治療薬の選択としてはオプションとなります。
そのため、できれば慢性疾患の初期段階または、なんとなく食べてはいるが体重が減ってきた老猫に投薬を開始するのがいいと思います。
(写真、グラフは、エルーラの技術資料より)