人と動物は身体の仕組みが同じ部分、似ている部分がとても多いですが、別の生き物です。普段私たちが食べている物や身近な物でも、動物にとっては有害な物も結構たくさんあるんですよ。よく知られているものから、これって動物が口にしちゃダメなの⁉と、意外なものまで…知っているだけで中毒を未然に防げることがあるかもしれません。
今回のお話は中毒を引き起こしてしまうものについて、食べ物以外のお話です。
薬(人の鎮痛剤や風邪薬)
特に人の薬で身近であり、犬猫にとって危険な成分はイブプロフェンやアセトアミノフェンと呼ばれるものです。これらは人の市販の風邪薬に配合されている事が多いので、家の中に置いてある方も多いと思います。犬よりも猫で感受性が高いため、猫の方が少量の薬でも中毒症状が出てしまう可能性も。誤って口にしないように気をつけてくださいね。
イブプロフェンを飲んでしまうと、少量の場合は消化器症状や腎不全、大量だとけいれんなどの神経症状や、死亡するリスクがあります。
アセトアミノフェンの場合、血液中の赤血球に含まれているヘモグロビンとくっつき、赤血球が酸素を運ぶのを邪魔してしまいます。(メトヘモグロビン血症と言います)
呼吸に関連するところに異常が起きてチアノーゼ(酸欠になり皮膚・粘膜の色が青紫色に変化)や粘膜の色が茶色くなる、といった変化が見られます。また、肝臓の機能に障害が出る、顔や全身が浮腫むなどの症状も見られます。

アセトアミノフェン中毒による結膜浮腫(目のまわり)

メトヘモグロビン血症による舌の異常(チアノーゼ)
タバコ(ニコチン中毒)
タバコに含まれるニコチンにより引き起こされる中毒です。紙タバコだけでなく電子タバコやニコチンガム、ニコチンパッチにもニコチンが含まれているため注意が必要です。
ニコチンは水に溶けると消化管からの吸収が増加するので、ニコチンの摂取後には飲水は避けてください!
ニコチンは神経に働きかける物質で、中毒の症状は少量の場合、興奮や震え、聴覚や視覚の障害、衰弱、けいれんといったものです。大量摂取の場合、虚脱(脱力した状態)、麻痺、呼吸が止まるなど、最悪の場合は死亡する可能性もあります。
植物
観葉植物や花、散歩中にある草花など、犬猫にとって危険な植物は実はとても多いんです。今回は、その中でも花びらを舐めただけでも危険なユリについて紹介しますね。
ユリ科の植物を口にすることで中毒が起こりますが、まだその原因物質はわかっていません。花粉や花びら、花が入った花瓶の水を舐めただけでも危険です。猫での感受性は高く、少量でも死に至る可能性があります。
口にした場合、数時間程度で元気消失や嘔吐がみられます。ネコちゃんの体内に入った毒物は腎臓を壊し、その結果、急性腎障害が起こって死亡します。救命するにはなるべく早く処置することが必要です。

有機リン
有機リンは殺虫剤や除草剤に一般的に使われている成分ですが、犬猫にとっては非常に危険な毒物です。舐めるだけでなく皮膚を介して体内に入ってきます。庭で遊んでいた、散歩から帰ってきたら様子がおかしい、といった外から帰ってきた後に症状が現れることも多いです。
嘔吐や下痢、よだれ、縮瞳(瞳孔が縮む)や神経症状である麻痺や痙攣(けいれん)などが現れ、重症の場合は死亡するリスクもあります。異変に気づいたらすぐに病院を受診し、心当たりがある場合は獣医師に話してください。
防水スプレー
防水スプレーは私たちの生活の中で使う機会も多いかと思います。とても便利なものですが、実はこの防水スプレーによって人や動物に中毒症状が起こることがあります。
防水スプレーによる中毒では元気消失、嘔吐、食欲低下、頻呼吸や呼吸困難が見られます。解毒剤は存在しないため、肺のダメージが回復するまで酸素療法や気管支を広げる薬などを使って対症療法をおこなっていきます。

さいごに
今回紹介しなかったものの中にも動物にとっては危険なものはたくさんあります。私たちにとっては身近な物でも、動物にとっては危険なものがある、ということを知ってもらえたら、と思います。危険なものはワンちゃんネコちゃんの触れる範囲の場所には置かない、というのがとても重要ですね。
もし万が一、危険なものを食べてしまった場合は、何を、どのくらいの量を、いつ、食べてしまったのかをできる限り把握して、早めに動物病院を受診してくださいね。