最近、うちの子が軟便や下痢をすることが増えたかも?
元気はあるけれど、お腹の調子がずっと悪い……そんなワンちゃんはいませんか?
もしかしたらそれ、検査や治療が必要な病気かもしれません。
今回はなかなか気付きづらい病気のひとつである、犬の慢性炎症性腸症についてのお話です!
慢性炎症性腸症とは?
名前の通り、腸の粘膜に慢性の炎症が起きてしまう病気です。
その結果、食べ物の栄養をうまく吸収できず、下痢や吐き気などが起こります。
下痢や吐き気が続き、重症化するとだんだん食欲低下、体重減少、脱水などが見られるようになります。
慢性炎症性腸症の原因はまだ完全に分かっていませんが、遺伝子の異常、腸内細菌の乱れ、食事、免疫の異常などの要因が重なることが関係していると考えられています。
以前は炎症性腸疾患(IBD)や慢性腸症と呼ばれていました。

症状
胃腸の症状が3週間以上つづくことが、この病気の大きなポイントです。犬では主に「下痢」や「軟便」が見られます。その他にも様々な症状があります。
下痢や嘔吐が1-2週間で治ってしまう場合は急性胃腸炎という一時的な病気が多いですが、3週間以上上記の症状が続く場合には慢性炎症性腸症などの病気を有している可能性が高いため、一度病院に連れてきてもらうことをおすすめします。
この病気が進行すると…?
慢性炎症性腸症が長引いて腸の粘膜へのダメージが進行すると、体の中の大事なタンパクが腸の中に漏れ出してしまうことがあります。この状態を“タンパク漏出性腸症”といいます。
血液中のタンパクが減ると、皮膚がむくんだり、お腹に水(腹水)がたまるなどの症状が出てきます。このタンパク漏出性腸症の状態になると、命の危険があると言われています。
検査と診断
慢性炎症性腸症の診断は難しく、1つの検査では診断することが出来ないため、様々な検査の結果を総合して判断する必要があります。
慢性炎症性腸症と同じような症状をおこす病気(ホルモン病、肝臓病、腎臓病、膵臓病、腸の感染症や寄生虫、腸のがんなど)を除外することが非常に重要です。
血液検査腸の病気を診断することは出来ませんが、全身的な状態を確認するために重要です。血中タンパクの低下がみられれば、蛋白漏出性腸症の可能性があります。
超音波検査慢性炎症性腸症では大きな異常が無いことが多いですが、その他の病気を発見できることがあり、病気のヒントを見つけたり、除外するために重要です。
便検査寄生虫や感染症がないか確認します。
内視鏡検査全身麻酔が必要ですが、胃腸の中をカメラで見ながら検査することが出来ます。慢性炎症性腸症の診断やがんの除外のためには、胃腸の粘膜を数mmの大きさで沢山採取する生検が必要となります。

おもな治療
食事療法食事療法はとても重要です‼
症状がそれほど重くなければ、食事療法のみで症状が全て良くなることが少なくありません。食事療法にも様々なものがあり、ワンちゃんの状態に応じて獣医師が選択します。
腸内細菌のバランスを整える治療プロバイオティクスやシンバイオティクスといわれる製剤で腸内細菌のバランスを整えることで、症状が良くなることもあります。
ステロイド剤重症だったり食事療法が効かないワンちゃんはステロイド剤が必要なことがあります。ステロイドは炎症を抑える良い効果がある一方で副作用もありますので、定期的に検査を行いながら安全に使っていきます。

さいごに
犬の慢性炎症性腸症は「病気を完全にゼロにする」というより「長くうまく付き合っていく」病気です。
下痢や軟便などが3週間以上続く場合には、早めに検査を受けてみましょう。症状の程度や体調に合わせて、食事やお薬を組み合わせながら、その子に合った治療を見つけていきます。