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犬のフィラリア症、予防って本当に大事?(ショート版)
フィラリアは聞いたことがあるし薬も使っている、でも言われてみればどんな病気…?いつ、どうやってかかるの?

知っているようでなかなか奥が深いフィラリア。

この機会にフィラリア症を知って、フィラリアからあなたのワンちゃんを守ってあげませんか?

フィラリア症って?

フィラリア症とは犬や猫、フェレットなどの多くの哺乳動物に、犬糸状虫(フィラリア)と呼ばれる寄生虫が、肺動脈や心臓に寄生することで様々な症状が起こる病気であり、この寄生虫は蚊によって運ばれてきます。

では、フィラリアはどうやって犬の体の中に入り込むのでしょうか??

まず、フィラリアが寄生している犬の血液を、蚊が吸うことで蚊の体内にフィラリアの子虫(ミクロフィラリア、mf、L1)が入り込みます。蚊の体内に入ったミクロフィラリアは、蚊の中で成長し、犬に感染ができる幼虫(L3)になります。

この幼虫を体内に持つ蚊が犬に吸血して、犬の体の中へと侵入します。

犬の体に侵入した感染幼虫は、犬の皮膚の下で成長し、やがて肺動脈(心臓から肺へ繋がる血管)へと移動します。肺動脈に辿り着いたL5は成虫になり、雄と雌で交配をおこなってミクロフィラリア(mf、L1)をどんどん増やします

犬の体に侵入してから約6~7ヶ月でミクロフィラリアが生まれます。この状態になってしまった犬が蚊に吸血されると、蚊にミクロフィラリアが入ることになり、その蚊が別の犬を吸血することで、どんどんフィラリアの感染が広がっていきます。2)

フィラリア症の症状

寄生する数にもよりますが、少数の寄生では特に症状がなく、感染に気づかないこともあります。多い場合は200匹以上寄生すると言われています。1)

フィラリアは主に肺動脈(心臓から肺に向かう血管)に寄生し、血管の内側が傷ついたり炎症が起きて血管の壁が厚くなり、血液をしっかりと肺へ送ることができなくなります。

そうなると、心臓がその分頑張って血液を肺へ送り出そうとし、心臓に負担がかかってしまうようになります。また、肺自体にも炎症が起きてしまいます。

その結果、活動していてもすぐに疲れて動かなくなる(運動不耐性)、咳がでる、呼吸が荒くなるなどの心不全の徴候や、体重が減るといった症状がでてきます。ひどい場合には命に関わる可能性もでてきます。

検査と治療

近年では血液を使った検査キットを使って院内で簡単に検査する方法が最も多く使われています。

フィラリアに感染していることが分かった場合、治療の方法としては成虫を手術で取り除く方法がありますが、リスクが大きいとされています。また、他にも成虫のフィラリアを駆虫する薬を投与する方法がありますが、死滅したフィラリアが血管に詰まっていき、かえって悪化させてしまうリスクがあります。

高齢だったり、他に病気を抱えている犬、あるいは無症状~非常に症状が軽度の犬の場合はミクロフィラリアを薬で取り除き、成虫のフィラリアの寿命を待つ、という方法を選びます。ただこの場合、成虫のフィラリアの寿命は5~7年であり、フィラリアの数が徐々に減っていくのを待つしかないため、長い期間を要します。1)

やっぱり大事な予防~フィラリアに感染しないために~

上にあげたように、フィラリアに感染してから治療することは、ワンちゃんにとって少なからずリスクがあり、負担がかかってしまいます。予防すればフィラリアはほぼ100%感染を防ぐことができるので、ワンちゃんを守るためにしっかりと予防したいですね!!

フィラリアの予防薬には色々な種類があります。飲ませるタイプの錠剤やおやつタイプのもの、皮膚に滴下するもの、注射タイプもあります。フィラリアと同時に他の寄生虫に対しても効く予防薬もありますので、一緒にどのタイプの薬が合っているか決めていきましょう!
参考文献
1) Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 Client Information Sheets Heartworm Disease
2) Textbook of Veterinary Internal Medicine 第7版 p1353