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甲状腺ホルモンについて知ろう!
人間や動物の血液には100種類以上のホルモンが流れています。

ホルモンのなかで有名なのは、膵臓から分泌されて血糖値を調節してくれるインスリンでしょうか。
今回は甲状腺から分泌される“甲状腺ホルモン”についてお話しします。

甲状腺は分単位、ときには秒単位で甲状腺ホルモンを血液中に出したり止めたりして、常に血液中の甲状腺ホルモンが体にとってちょうどいい範囲になるように調節してくれています。しかし血液中の甲状腺ホルモンが適切な範囲を外れて少なすぎる、もしくは多すぎる状態になると、体全体がうまく働かなくなります。

甲状腺ホルモンと甲状腺疾患の関係

人間の甲状腺はのどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下にあり、蝶が羽を広げたような形をしています。
犬や猫の甲状腺は左右に分かれていて、それぞれ細長い形をしています。

甲状腺ホルモンは胎児や赤ちゃんの脳を発達させ、成長期には骨や歯を発達させ、それとともに全年齢で新陳代謝を活発にする働きがあり、なくてはならないホルモンです。

赤ちゃん〜成長期に甲状腺ホルモンが不足していると体全体の発育が悪くなります(クレチン病)。
人間が大人になって甲状腺に炎症が起こると、甲状腺ホルモンが出せなくなって体全体の新陳代謝が落ちて倦怠感、活動性の低下、皮膚の乾燥、脈拍の遅さ、肥満が起こります(橋本病)。

一方、人間の大人で甲状腺が腫瘍になったり、甲状腺に対する自己免疫(バセドウ病)のために甲状腺ホルモンが多すぎる状態になると、イライラ、発汗、動悸(脈が速くなる)、体重低下などの症状が起こります。

クレチン病

生まれつき、あるいは成長期に甲状腺ホルモンが不足すると、体が成長しない、永久歯が生えない、毛が生え変わらない、元気がないといったクレチン病が起こります。クレチン病は犬でも猫でもまれに起こります。

成長の遅れや元気のなさに早く気づき、血液検査(甲状腺ホルモンの検査)でクレチン病と診断できれば、甲状腺ホルモンの薬を与えることで成長や元気を取り戻すことができます。

成犬の甲状腺機能低下症

成犬では甲状腺の炎症または甲状腺の萎縮によって甲状腺ホルモンが不足する「甲状腺機能低下症」がしばしば起こります。若い成犬から老犬まで、全年齢で起こる可能性があります。およそ500頭の犬につき1頭が甲状腺機能低下症になると見積もられています。

甲状腺機能低下症になったワンちゃんは、元気がない、顔の表情が暗い、運動を嫌がる、体温が低い、避妊していない女の子のワンちゃんでは発情が止まるなどの症状が現れます。ワンちゃんが若ければこのような症状に気づきやすいですが、老犬では「年齢のせい」と考えられて発見が遅くなりがちです。

診断
犬の甲状腺機能低下症は血液中の甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)、遊離サイロキシン(fT4)、そして脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)の3項目を測定して診断するのが一般的です。
しかし血液中のこれらのホルモンは、犬の体調や持病、服用している薬に影響されやすいので、甲状腺機能低下症を正しく診断するのは容易なことではありません。
犬種によってホルモンの量が違う!?
 イタリアン・グレーハウンド、ウィペット、サルーキ、ボルゾイなど視覚ハウンド(サイトハウンド)に分類される犬種は、他の犬種と比較して血液中のT4やfT4が低いため、診断には注意が必要です!
治療
甲状腺機能低下症と診断されたワンちゃんは、甲状腺ホルモン製剤を服用することで見違えるように元気を取り戻すことができます。しかし、実は甲状腺機能低下症ではないにもかかわらず甲状腺ホルモンを服用しているワンちゃんの場合は、いつまでたっても(数カ月治療しても)元気を取り戻しません。

猫の甲状腺機能亢進症

猫の甲状腺機能亢進症はおもに8歳以上の猫がかかります。日本国内では8歳以上の猫の4%程度がかかります(欧米ではもっと多く、8-10%以上の猫がかかるといわれています)。左右の甲状腺のどちらかまたは両方に腫瘍(ほとんどの場合は良性です)ができて、甲状腺ホルモンを分泌しすぎるために起こります。人間のバセドウ病のように、甲状腺に対する自己免疫が甲状腺を誤作動させるタイプの甲状腺機能亢進症は、猫にはありません。また、成猫に甲状腺機能低下症が起こることはまずありません。

甲状腺機能亢進症になったネコちゃんは、活発で落ち着きがなく、食欲が増して水もよく飲みます。しかし体重は徐々に減っていきます。「うちの子は年甲斐もなく元気でよく食べる」などと病気に気づかないうちに、心臓病、高血圧、腎臓病が併発していきます。
診断
甲状腺機能亢進症は猫ではとても多い病気であるうえに、気づかれにくい病気でもあります。ただ猫ちゃんの場合、血液中のサイロキシン(T4)を検査すれば、(犬の甲状腺機能低下症とは異なり)それだけで診断がつきます。このため8歳を超えたネコちゃんでは、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。
治療
ネコちゃんの甲状腺機能亢進症に対しては、甲状腺ホルモンの分泌を抑える内服薬(チアマゾール)を与えるか、甲状腺の腫瘍を手術で取り除くことによって、ほとんどの子が健康を取り戻すことができます。ただし心臓病や腎臓病が進んでしまったネコちゃんでは、これらの病気の治療をしなければなりません。

おわりに

甲状腺ホルモンの病気は、ワンちゃんもネコちゃんもかかることが分かっていただけましたね。ただ、症状がゆっくり現れるため「年齢のせいかな?」と見過ごされてしまうことが多いです。
元気がなくなったり、体重が減ったり増えたり――そんなちょっとした変化に気づければ理想ですが、毎日一緒に暮らしていると案外わかりにくいものですよね。
だからこそ、定期的な健康診断がおすすめです。 特にシニア期に入ると、体の中ではいろいろな変化が起こりやすくなります。気になることがあればぜひご相談ください。