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角膜潰瘍~早期発見で“見える未来”を守ろう
いつもよりまばたきを多くしたり、目を開けづらそうにしている…もしかしたら“痛い”サインかもしれません。

角膜潰瘍ができると、痛みのために目を開けづらくなり、涙や目ヤニが急に増えます。傷が浅いうちに治療を始めれば、視力を落とさずにすむだけでなく、短期間で回復することが期待できます!
毎日ワンちゃんネコちゃんとアイコンタクトをとるようにしておくと、こうした変化にすぐ気づくことができますよ。

角膜潰瘍とは?

角膜に傷ができることで角膜の一部が剥がれた状態のことをいいます。
傷の範囲や深さはさまざまで、深さによっては表面だけ、奥の方まで、さらには穴が開いてしまうこと(穿孔)もあるんですよ。

角膜潰瘍は目が飛び出しているようなフレンチブルドッグパグシーズーチワワなどの犬種に多くみられます。また、初めは浅い傷だったのに、目に違和感を感じて前足で目を引っ掻こうとするため、すぐに悪化してしまうケースも多いです。

角膜潰瘍の原因には次のようなものが挙げられます。
外傷
まつ毛の異常
瞼のできもの
ドライアイ
細菌やウイルスによる感染
シャンプーなどの化学薬品による刺激
神経障害

診断

まずは問診と視診で、何が起きているのかをある程度予測します。
症状はいつから?どこで?痛みは?見えていそう?生活環境やこれまでの病歴は?
などを、ご家族にはお聞きします。

その次に実際に視診、触診をしていきます。

目の色、大きさ、見えているかどうか
などを確認していきます。さらに眼科用の機械を使って、眼の構造を詳しく調べます。

角膜潰瘍を診断するための検査方法:フルオレセイン染色
角膜を染色して洗い流します。角膜潰瘍が起きている場合には、色が流れずに残っている、という仕組みです。 この検査は痛みがほとんどなく、ごく短時間で傷の深さと広がりを調べることができますよ。

シルマー試験
シルマー試験は、涙の量を測ることでドライアイがあるかどうかが分かる検査であり、必要に応じて行います。

細菌感染がないか
これらの検査を行い、角膜潰瘍の原因や併発疾患がないかどうかを詳しく調べます。

治療

角膜潰瘍は、適切な点眼薬を選べば治りが早く、ワンちゃんネコちゃんの負担も最小限で済みます。浅い角膜潰瘍は、早期に適切な点眼治療を開始すれば、通常1週間以内に治癒します1)

治療のポイントは大きく分けて3つです!

第一に、抗生物質や角膜保護剤、鎮痛剤を組み合わせた点眼・内服治療です。
ご自宅での点眼はじっとしてくれず大変かもしれませんが、やはり治療には点眼が欠かせません。もし点眼が難しい場合は一緒に練習しましょう!
次に、エリザベスカラーなどで掻き壊しを防止することです。
そんなこと??と思われるかもしれませんが、とても重要なポイントです!現在の目の状態からさらに目を傷つけないことで、治療にしっかり反応して良くなってくれますよ。
治療しても良くならない深い傷や、穴が開いている場合には手術 が必要なこともあります。

自宅でできる予防、早く気づくコツ

毎日顔まわりをなでるときに左右の目の開き方や充血、目やにをチェックしてあげてください。
家の中でワンちゃんネコちゃんの目の高さに尖った物がないよう、家具や観葉植物などの配置を見直しましょう。

もし「ちょっと変かも?」と感じたら早めの受診が鉄則です!目の病気は様子見しているうちに、すぐ悪化する危険性があり、そうなってしまうと治療が難しくなるケースもあります。

自宅での点眼方法

処方どおりに点眼を続けると傷の治りが一段と早まり、浅い角膜潰瘍なら多くの場合 “1週間以内の完治”が期待できます!
通院回数やワンちゃんネコちゃんのストレスも減らせる、大切なホームケアです。

食事やお散歩など、イベントの前に点眼すると、目を気にする素振りが抑えられると思います。また、点眼のあとはご褒美のおやつをあげて、目薬が嫌いにならないようにしてみてください!

おわりに

角膜潰瘍は、早期発見・早期治療ができれば視力を失わずに治療できる病気です。
今日からできるアイチェックが、明日の大きな安心につながります。どうぞ毎日のスキンシップ、アイコンタクトで、おかしいかも?と感じたらご相談にいらしてくださいね。
参考文献
1)VCA Animal Hospitals “Ulcerative Keratitis in Dogs/Cats”, ScienceDirect Topics

写真提供:どうぶつ眼科専門クリニック 辻田先生