いろ動物病院

先日外耳炎セミナーを開催しました。
たくさんの方からお申し込みがあり、いつもの倍の人数を募集したのですが、それもすぐ埋まりキャンセル待ちまでしていただく反響ぶりでした。それだけたくさんの方が経験したり、気にしてケアされているんだと改めて実感しました。

データを確認すると、やはり
耳を気にしている、治療してもちょこちょこ外耳炎を繰り返す、など耳のトラブルを抱える子は多く、動物病院を受診するワンちゃんのうち、16.1％（およそ6頭に1頭）は耳の疾患で受診しています^1）。猫ちゃんは2％ぐらいと言う報告があります。

耳の問題は外から分かりづらいことも多く、ワンちゃんネコちゃんにとっては大きなストレスとなり、QOL（クオリティ・オブ・ライフ：生活の質）が下がってしまいます。中にはイライラしすぎて性格が変わってしまう子もいます。
さらに外耳炎を放置しておくと、より重大な問題につながってしまうこともあります。治せる外耳炎治せるうちに！という事で、簡単にではありますが、外耳炎の話をしていきたいと思います。

外耳炎とは、耳の入口から鼓膜までの外耳道と呼ばれる場所に起きる炎症のことであり、犬では比較的遭遇することの多い病気です。

外耳炎になると次のような症状がみられます。

急性外耳炎の場合、一気に耳が赤くなったり腫れたりすることがあるので、耳を気にする素振りがあれば、早めに耳をめくってチェックをしてみてください。外耳炎は悪化すると、中耳炎や内耳炎を引き起こし、強い痛みや神経症状にまで進行してしまうこともあります。

外耳炎は、犬でよくみられる病気のひとつですが、その中でもプードル系、スパニエル系、レトリーバー系、ブルドッグ系といった犬種は外耳炎が発生しやすいと言われています^1）。耳のかたち（垂れ耳）の違いや耳の中の分泌腺の違いなどが理由のようです^2）。また皮膚のトラブルの多い柴犬やシー・ズーなどもよく遭遇します。

また、猫だとスコティッシュ・フォールドやアメリカン・カールのような折れ耳の猫は、耳垢が溜まりやすく耳道に湿気がこもりやすいため注意が必要です。

外耳炎になりやすい犬種、猫種は、普段から耳の状態をチェックすることが大事です。しかし、耳の奥の方はおうちで見ることが出来ないので、上記の【症状】や【耳の臭い】【触り心地】などを確認して、なるべく早めに異常に気付けるようにしましょう。

動画をご覧ください（https://youtube.com/shorts/GZMzIwNiiAs?feature=share）
表面が薄ピンクでツルッとしています

動画をご覧ください（https://youtube.com/shorts/VeJ46FMbONo?si=dpqyLDwA3D_MB1-H）
表面が赤くポツポツ腫れがみえ、汚れもあります

外耳炎にはいくつかの原因があります。

犬ではアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの症状として、猫では食物アレルギーの症状として外耳炎がみられることがあります。この場合には、外耳炎の治療と並行してアレルギーに対する治療が必要です。また基本的に外耳炎が再発するため、再発させないための治療が肝心です。

脂漏症とは、何らかの原因により皮脂が多く分泌され、耳垢が多く作られます。そこに細菌やマラセチアが二次的に増殖することで外耳炎となります。この場合は、耳垢がとにかく多いので、いかに耳垢を洗浄で管理できるかが大切です。

耳の中にできものができたり、植物の種などの異物が入ってしまったりすることで炎症が起こることがあります。その他にも免疫が関与するような病気が隠れている場合もあります。また耳毛が多い場合は、それに耳垢が絡まることで、外耳炎を発症することもあります。耳毛を抜く必要があるかどうかは、その子その子の状況で異なります。その他にも寄生虫や全身疾患でなる場合もあります。

おうちでの症状と耳の状態から、外耳炎と診断することは比較的簡単にできますが、なぜ外耳炎になったのか、なぜ治らないのか、その原因を突き止めていくには時間や手間がかかることもあります。
ただこじれてしまわなければ、比較的治すのは簡単です。しかし再発が非常に多いため、再発させないことがポイントです。そのポイントとして、なぜ外耳炎になったのか深く洞察する必要があります。

先ほど挙げたような原因がないか探るためには、耳の状態を直接観察する（耳内視鏡検査）だけでなく、耳垢を顕微鏡で観察する検査（耳垢細胞診）、外耳炎を悪化させる原因となる細菌を特定する検査（細菌培養検査）、レントゲンやCT検査など、様々な検査が必要となることもあります。

外耳炎の治療は、耳の中をきれいに洗浄し（これがとても重要）、症状に合った薬で炎症を抑えていきます。薬は耳に直接塗るぬりぐすり（点耳薬）の他にも、状況に応じてのみぐすりを処方することもあります。

また、外耳炎の治療と一緒に、必要に応じて原因に対しての治療を行います。この治療は当然原因に応じて異なります。経過が長く耳がカチカチに腫れている場合や、できものがある場合などは、手術することもあります。

何より生活の質を大きく下げてしまう外耳炎。耳掃除と薬がセットで治療になることから、お家での治療だけではうまくいかないことも多いです。外耳炎の場合、耳をさわれない子もたくさんいますからね。

自分自身が中耳炎をやった時の痛みが強く、それ以降たかが外耳炎ではなく、ものすごい辛い病気だと認識するようになりました。ずーっと耳が痒い・痛いと言うのは本当に日々辛いと思います。ですから、もうこれぐらいで仕方ないだろうと思わずに、諦めずに治療してあげてほしいと思います。

当院では耳内視鏡を導入し、皮膚科治療にも力を入れているため、外耳炎の診療も得意としています。すでにたくさんのセカンドオピニオン子も治療で回復してきました。お悩みの方ぜひ一度ご相談ください。