健康診断や泌尿器の病気を疑うとき、できる限り尿検査をすすめています。
人でも健康診断のひとつとして、尿検査は身近な検査ですよ。ただ、尿検査はなにを調べているのか、そこからどんな病気が分かるのか、ご存じでしょうか?
“うんちは健康のバロメータ―” と聞いたことがあるかもしれません。
おしっこも同じであり、体の異変が外に現れてくるもののひとつです。誰が見ても分かるような赤い尿をしていると何かの病気!?とすぐに病院に連れていくことができると思いますが、見た目に変化がなくても詳しい検査をしてみると異常だった、ということもあります。

尿ってなに?
そもそも尿ってどこで、何のために作られているか知っていますか?
尿とは体の中の不要な物質を捨てるためのものです。不要な物質を最低限の水に混ぜて体の外へと捨てます。
尿がつくられる場所は腎臓です。腎臓で作られた尿は尿管という細い管を通って膀胱に溜められ、やがて尿道から外へ捨てられます。
ということは、腎臓や尿管、膀胱、尿道といった尿の通り道に異常が起こると、血が混じったり(血尿)、細菌が混じったりして尿に異常が起こることは分かりやすいです。
でも実はそれだけではないんです。
尿は“血液”から作られます。血液が腎臓を通りぬける時に、血液の中の不要な物質と水が尿として尿管の方へ流れていくのです。なので、血液の中に混じっている異常も見つかることがあります。

尿検査で分かること
尿検査で分かる異常をおおまかに下の表にまとめました。
尿比重尿の濃さをみるもので、腎臓がきちんと働いていると濃い尿がつくられる。薄い尿の場合は腎臓がきちんと機能しているのか、他の検査も併せて判断する。食前食後、運動した後など1日のうちでも変動するため見過ごされがちですが、腎機能の判断には非常に重要な検査です。
pH尿にも酸・アルカリがあり、犬猫の正常は6~7(若干の酸性~中性)である1)。このpHが酸性やアルカリに傾いているとできやすい尿石がある。
グルコース(糖)正常なら尿の中に糖は混じらない。糖が混じる=血液の中の糖が多すぎる場合(糖尿病)や、腎臓の異常(腎性尿糖)が考えられる。
尿蛋白尿の中にタンパクが混じるときに考えられるのは、血液中に異常なタンパクが混じっている可能性、腎臓疾患、膀胱や尿道に炎症や腫瘍がある可能性、です。
腎機能の管判断には非常に重要ですが、膀胱炎、血尿でも上昇するため判断には注意が必要です。膀胱炎や血尿がないにもかかわらず、タンパク尿を認めるときは腎機能障害を強く疑います。そのまま放っておくと急速に腎機能が低下する可能性があるため、すぐに治療が必要です。
ケトン通常は陰性で、陽性の場合には栄養や代謝の問題を考える(例えば糖尿病)。まれに尿の色が強いと陽性となることもある。
潜血尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこかで出血すると、尿に血が混じる。
ビリルビンビリルビンとは赤血球が分解されたときに出てくる色素のことで、胆汁に含まれており、尿にでてくることはない。犬では通常でも尿の中に少し混ざることはあるが、猫では混ざっているとどこかに異常があると考える。ビリルビンが尿に混ざったときに考えられる病気は、赤血球が壊される疾患(溶血性貧血)や、肝臓・胆道の疾患である。
沈渣の顕微鏡尿の中に異常なものが混じっていないか顕微鏡で確認する。細菌、血の成分(赤血球や白血球)、結晶(尿石の成分)、細胞など。
このほかにも前立腺、子宮に病気起きている場合にも血尿などの異常が現れることがあります。
尿検査からこんなに多くのことが分かること、少しびっくりではありませんか?
ここから分かるように尿検査は基本的ですが、とても重要な検査のひとつで、よく健康診断の項目にも入ってきます。
こんな時は尿検査を!
こんな症状がある場合には動物病院を受診して、尿検査を含めた検査を受けるべきかどうか相談してください。

さいごに
症状が無くても目には見えない異常が隠れている場合もあるため、定期的に健康診断のひとつとして尿検査を受けることをおすすめします!
とは言え検査前にまずは尿を採取しなければいけません。採取の方法として、
・お腹に針を刺して、膀胱から採尿(理想的だが痛いかも)
・排尿中の尿を採取
・トイレや床に溢れた尿を採取
があります。繰り返し検査をしたい尿検査で膀胱に針を刺すのは嫌がられます。当院では、「しょうゆ差し」とスポンジのついた「採尿棒」を準備し、自宅で自然排尿の採取が中心となります。

是非気になることがある場合や、健康診断を受ける場合の参考にしてみてくださいね。