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赤い尿はほんとに血尿?
ネコちゃんと一緒に暮らしているご家族の中には、猫が腎臓や泌尿器の病気になりやすい動物ということをご存じの方も多いと思います。猫の尿は本来濃い黄色ですが、さまざまな病気で尿の色が赤くなることがあります。赤い尿=血尿=膀胱炎と勘違いされ、緊急に治療が必要である病気が見過ごされてしまうことがあります。

血尿の原因が膀胱炎ではないと分かった時にはすでに病気が進行してしまっているなんてことはぜひとも避けたいですよね。今回は、そんな単純なようで奥深い“赤い尿”についてご紹介したいと思います。

ご家族が血尿と思う(であろう)赤い尿は、すべてが血尿ではなく、血尿血色素尿、そしてミオグロビン尿の3種類に分けられます。

血尿

血尿とは字のとおり、尿中に血液が混ざっているものです。腎臓・尿管・膀胱・尿道(尿路)のいずれかから出血をしていると、尿の中に血液が混じり、血尿となります。また女の子の場合は、子宮からの出血が尿中に混ざることがあります。

血尿がみられる代表的な病気としては次のものがあげられます。
※少し難しい内容になりますので、以降の病気については気になるものだけ読んでみてください。たくさんあるんだということを理解していただければ十分です。


尿路結石
腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石といった、尿が作られて体の外へ出てくるまでの経路のどこかに結石がある場合です。この結石が膀胱などの壁を傷つけることで出血が起こります。
尿路感染症
尿路のいずれかに細菌が感染して炎症が起きている場合です。
特発性膀胱炎
原因不明の膀胱炎でありストレスの関与が疑われます。
尿道の部分閉塞
尿道に結石などが詰まると、尿を出したくても出せないことがあり、これを尿道閉塞と言います。尿道が完全に閉塞した場合は尿が出ませんが、部分的に詰まっている場合はポタポタと血尿が垂れることがあります。
腫瘍
尿路に発生した腫瘍により出血がおきることがあります。
外傷
交通事故や高所からの落下により膀胱や腎臓に障害を受けた場合に出血することがあります。
血液の凝固異常
出血を止める機構(血液凝固能)に異常があります。
子宮蓄膿症
子宮がある女の子にみられる疾患です。

血色素尿

血管内で赤血球が大量に破壊され、赤血球の色素であるヘモグロビンが尿中に出ているもので、ヘモグロビン尿とも言います。代表的な病気としては以下のものがあります。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
自分の免疫が自身の赤血球を攻撃・破壊してしまう免疫病であり、破壊された赤血球の色素が尿の中に混じります。
タマネギ中毒
玉ねぎの中に含まれるアリルプロピルジスルファイドという成分によって赤血球が破壊され、ヘモグロビンが尿の中に混じります。
アセトアミノフェン中毒
市販の頭痛薬や風邪薬に含まれる成分であり、これらを誤食することで血色素尿がみられます。
ヘモプラズマ感染症
ヘモプラズマと呼ばれる病原体が猫の赤血球に寄生してそれを破壊します。このヘモプラズマに感染する経路は、ダニによる吸血、猫同士の喧嘩による咬傷、および感染している母猫から胎盤を通じて胎仔にも感染する母子感染などが考えられています。
犬糸状虫症(フィラリア症)
蚊が媒介して心臓や肺動脈に寄生する恐ろしい虫です。犬の感染症と思われがちですが猫にも感染するフィラリアによって血尿がみられることもあります。

ミオグロビン尿

筋肉が破壊されることで筋肉の色素であるミオグロビンが尿中に出ているものです。代表的な病気として以下のものがあります。
広範囲の筋肉の怪我
交通事故や高所からの落下などで起こります。
筋炎
さまざまな原因により起きた筋肉の炎症です。
長時間の痙攣(けいれん)
癲癇(てんかん)や脳腫瘍、代謝の異常などで起きた痙攣です。

赤い尿となる原因は?

このように赤い尿と言っても原因は多岐にわたります。一見するだけでは赤色尿が血尿なのか、血色素尿か、ミオグロビン尿であるか、そしてそれを起こした原因を判断することはできません。それではどのように赤色尿の原因を確かめるのでしょうか?それは見た目では判断ができないため以下のような細かい検査を組み合わせて行います。

検査説明
尿検査血尿、血色素尿、ミオグロビン尿の判断をします。尿を顕微鏡で観察して赤血球や細菌、結晶の有無を確認します。
血液検査血色素尿が出ているときには貧血を起こすことがあります。また血尿以外にも出血が見られる場合には血液が固まる機能が正常かチェックすることもあります。
レントゲン検査尿路に結石がないか、腎臓の形や大きさは問題ないか、外傷がないかなどを調べます。
超音波検査腎臓や膀胱の形だけでなく内部構造まで判断できます。腎臓や膀胱の結石や腫瘍、炎症などを判断することができます。また近年のエコーは精度が向上したため尿管に存在する小さな結石も見つけることができるようになりました。
CT検査上記の検査ではわからない体の小さな異変を発見できることがあります。ただし全身麻酔が必要です。

赤い尿といっても様々な原因があり、診断するためには必要に応じた検査をしなければならないことが分かりましたね。ですので、ネコちゃんが赤い尿をしている!と気が付いた時には病院へ連れてきてください。とはいえ、すぐに連れていくことが難しい場合もありますよね。そんな時は次のことを確認してください
尿の色(スマートフォンなどで写真を撮ると動物病院で説明しやすいです。このときには白いトイレ砂の方がわかりやすいです。)
いつから赤色尿が始まったか
尿がどのくらいの量でているか
排尿の回数や排尿時の痛みはないか
尿の匂いがいつもと違って腐敗臭がしないか
元気や食欲の有無
嘔吐していないか
ネギ類やネギ類と一緒に調理した人の食事を食べていないか
人間の医薬品を誤食していないか
交通事故や落下の可能性
陰部から激しい出血をしていないか
口の粘膜が白かったり黄色かったりしないか
ぐったりしてショック状態になっていないか
これらのことを確認しておくと動物病院で説明がしやすいと思います。

採尿のやり方

もし自宅で採尿する場合には次のような方法でやってみてください。
システムトイレのトレイのシートを外す
ペットシートをひっくり返してトイレに敷く
チラシなど比較的撥水性がある紙をシュレッダーにかけてトイレ砂の代わりにする

さいごに

これらの方法でトイレに溜まった尿を採取して動物病院に持ってきてもらえると、その尿で検査を行うことができます。その際にはできるだけ新鮮な尿だと正確な検査結果となります。

最後になりましたが、ネコちゃんの赤い尿に早く気づくためにも毎日のトイレの観察は欠かせません。排泄のタイミングで尿の状態をチェックしてあげてくださいね。