人にも、動物にも感染する恐ろしい感染症、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、犬や猫、そして人にも感染するウイルス感染症(人獣共通感染症)です。
最近、ニュースなどでも目にすることが増えてきたこの病気ですが、感染すると命に関わる、人にとっても、動物にとっても非常に恐ろしい感染症です。
日本国内でのニュース
これまでSFTSを発症した猫の看病をされていた飼い主様が感染し、亡くなられた、という痛ましい事例が報告されています。さらに今年(2025年)には、三重県で入院中の猫の治療にあたっていた獣医師がSFTSに感染し、その後亡くなるという大変ショッキングな出来事も起こっています。ご本人はマダニに噛まれた痕はなく、猫からの感染によるものではないかと考えられています。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTSは、SFTSウイルスによる感染症で、マダニがこのウイルスを運び、そのマダニに噛まれることで感染します。
国内では、西日本を中心に報告されていますが、最近では東日本でも人の患者が確認された地域が出てきています。また、患者が報告されていない地域でもSFTSを保有するマダニは見つかっているため、SFTS患者が報告されていない地域でも注意が必要です。
主な人への感染経路はマダニの咬傷によるもので、2012年に初めて国内での人への感染が報告されました(山口県)。
どうやってうつるの?
マダニに噛まれることで感染します
感染した犬や猫のよだれ、血液などの体液から人にうつる可能性もマダニは草むらや公園などに潜んでいます。お散歩など、お外で過ごす時間があるワンちゃんネコちゃんは特に注意が必要です。
犬猫にうつるとどうなる?
人が感染すると、発熱、嘔吐や下痢といった消化器症状、出血症状がみられます。致死率は10~30%と言われており1)、特に高齢者では重篤化しやすいです。犬猫が感染すると、次のような症状がみられます。
現在日本では犬、猫、チーターがSFTSを発症した動物として報告されています2)。発症した場合、人と動物では似たような症状がみられます。犬は人よりも軽症ですが、猫は重篤化しやすく、なんと致死率は6割を超えるともいわれています1)。
残念ながらワクチンや特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法です。だからこそ、当院でもSFTSにたいする感染防除対策と、飼い主さまへの啓蒙を継続して行っております。

感染しないようにできる対策
動物だけでなく、私たち人間にも危険が及ぶ可能性がありますので、マダニに噛まれないよう、普段からしっかりと対策しましょう。
完全室内飼いのネコちゃんであっても、私たち人間の衣類に付着したマダニが家の中へ持ち込まれるケースやベランダ・窓からの侵入など、さまざま経路での感染が考えらます。
駆虫薬で定期的に駆虫する一般的に、ノミ・マダニの予防薬といわれている薬は、動物に咬みついたノミ・マダニを駆虫する薬で、動物に咬みつくことを防ぐことはできません。SFTSは、咬みつかれた時点で感染する可能性があるため、確実な予防とは言えません。とはいえ、マダニを駆虫することで感染を広げないという点では有効であるため、定期的な使用をオススメします。
もしマダニが付いているのを見つけたら、まずは動物病院へ電話をマダニが寄生しやすいのは以下のような部位です。普段からスキンシップやブラッシングのときに体に付いていないか見てあげてくださいね。
もしも寄生されているのを見つけたら、絶対に取らないでそのまま動物病院に電話をしてください。
無理にピンセットなどで取ってしまうと、マダニの口器が皮膚に残ってしまい、そこから病原体が侵入する可能性があります。
当院では、SFTSの感染が否定できないとし、「特別な感染症対策」をとって対応いたします。

さいごに
ワンちゃんネコちゃんのマダニ対策は、ワンちゃんネコちゃんを守ると同時に、ご家族の身を多くの感染症から守ることにも繋がるため、是非予防してあげてください。駆虫薬には色々な種類があるため、ぜひ一度相談にきてくださいね。