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西京の森学べるレターVol.29 「SFTSに要注意!」

西京の森学べるレターVol. 29 2025.08

厳しい暑さが続くなか、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
わんちゃん、ねこちゃん、ご家族の皆さまも、熱中症対策は十分に!今年も納涼を楽しみ、素敵な思い出をつくりましょう!

「SFTS」に要注意!

人にもうつる恐ろしい感染症「SFTS」の発生報告が増えています。当院でも対策を進めています。ご協力をお願いいたします。また、今回の  「わん!ポイントアドバイス(ページ下)」で詳しく解説しています。ぜひご一読ください!

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「わん!ポイントアドバイス」人にも動物にも映る感染症、SFTSについて

重症熱性血小板(SFTS)とは
今回はマダニ介在性の重症熱性血小板症候群(以下、SFTS)という人にとっても、動物にとっても重要な感染症についてのお話です。先月、三重県の獣医師がSFTSウイルス感染により亡くなられるという悲しい報告がありました。感染経路は明らかになっていませんが、おそらくSFTSを発症した猫から感染したものと考えられております。SFTSは、2011年に原因ウイルスが特定された新しい感染症です。主な感染経路はマダニの咬傷によるもので、2012年に初めて国内での人への感染が報告されました(山口県)。感染する可能性がある動物は、人のみならず、私たちの身近なイヌ、ネコにも感染し発症します。SFTSウイルスに感染すると6日~2週間の潜伏期を経て、発熱、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛が認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを引き起こし、死亡する可能性がある病気です。2024年までの報告で人の感染者数は963名、うち、死亡者数が106名、治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンもないため、発症した場合の致死率は、人(6.3~30%)イヌ(40%)ネコ(60%)と高くなっています(国立感染症研究所ホームページ参照)。国内でSFTSウイルスが見つかってから約10年間で、冒頭のような発症動物から人への感染や、動物間(犬=猫)の感染、人から人への感染も多例報告されております。
SFTSに感染しないために私たちが気を付けること
※マダニに刺されない対策をする
散歩の際には草むらを避け、長袖、長ズボンを着用するなど肌の露出を避ける。散歩から帰った際には、人間・犬猫ともにマダニに咬まれていないかをチェック。登山、キャンプ、農作業などは特に注意
※ノラ猫(地域猫)、ノラ犬との過度な接触を避ける
※マダニに刺された場合
マダニが皮膚に吸着した場合は、医療機関で除去してもらい、その後の体調の変化に注意してください。SFTSの上記の潜伏期間(6日~2週間)に発熱などの症状があらわれた場合は、早期に医療機関を受診してください
※ペットにマダニが寄生するのを防ぐ
動物病院で適切なマダニ予防薬を処方してもらい定期投与を行う。予防薬により、マダニからウイルスの侵入を防げるかどうかは明らかになった折りませんが、みなさんの生活環境へのマダニの侵入を防ぐ意味としては効果は高いと思われます。
最後に・・・
今回、亡くなられた獣医師のみでなく、私の身近でもSFTS発症動物との接触により感染し、命の危険にさらされたかたがおられます。そういった現状に呼応して、当院含め、動物診療施設では各々の方針でSFTSに対する感染防除対策を適宜行っていると思います。屋外に出る猫ちゃんやマダニの咬傷歴のあるワンちゃん、動物病院に行かれる前に、事前にご連絡をしていただけると助かります。怖がるべき対象は人でも動物でもなく、SFTSウイルスです。このようなウイルスが身近にいることを知っていただき、まわりに啓蒙をしていただけるとありがたく思います。

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