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慢性の嘔吐・吐出の猫ちゃん

よく吐く猫ちゃんって様子見ていいんでしょうか?

猫ちゃんを飼っている方なら、お家の子が吐いている姿を一回は見たことがあるのではないでしょうか?
その嘔吐は様子見でいいのか分からないですよね。

実は私たちも「その嘔吐は問題ありません!」と安心していただきたいのですが、なかなか断言しにくい事も多々あります。
なぜなら、【慢性の嘔吐】が【胃腸の疾患の症状だった】という事を経験しているからなんですね。
どういうことかというと、


週1〜2回の嘔吐がある子が、少し吐く回数が増えてきたと来院されて、検査をしてみると胃の炎症がありましたということがあります。その治療をしてみたら、週1〜2回あった嘔吐がほとんどなくなりました!ということがあるんですね。

となると、ずっと問題ないと思っていた週1〜2回のが嘔吐が、実は疾患のサインだった可能性があるということです。

急に怖くなる話をして申し訳ないのですが、ちょっとの嘔吐で元気にしていれば【絶対】問題ないという訳ではなく、病気の可能性【は】あると考えておいた方がいいということですね。


今回猫ちゃんで慢性の嘔吐と吐出(としゅつ:広い意味では吐き出すことなのですが、嘔吐とは吐き方が異なります)が見られ、内視鏡検査を行った猫ちゃんの報告をさせていただきます。

嘔吐している猫ちゃんがきた!どうする?

全ての猫ちゃんに検査をするわけではありませんが、検査をする前にどの病気をどれだけ疑っているか(検査前確率などを含め検討)を考え、その病気を証明するため(もしくはその病気がないことを証明するため)に検査が必要か判断していきます。
大まかな流れとして
まずは嘔吐を主症状とする全身疾患のチェックを行います
血液検査
レントゲン検査
エコー検査
吐いている猫ちゃんで、よく遭遇する疾患として【膵炎】【胆管炎】【腸炎】などがあります。それ以外にも甲状腺や腎臓病などでも吐くことがあります。そのため血液検査、レントゲン、エコーを行い、各疾患を除外していきます。

今回は、その中で消化管(胃・腸)を疑い、何の疾患が胃腸に生じているか調べるために、内視鏡検査を行いました。

内視鏡検査・生検

内視鏡検査のメリット
組織生検を行えるため、得られる情報が多い(病気の診断ができる可能性が高い)
実際に消化管の内部を見られるため見た目の判断もできる
切ったりしないので、痛みの少ない検査である
内視鏡検査のデメリット
全身麻酔が必要である
場合によっては通常の手術より絶食時間が長く必要
場合によっては浣腸が必要


今回の猫ちゃんも通常通り内視鏡で見た目を確認しつつ、生検を行なっていきました。
食道狭窄がありました!
小腸から胃にかけて炎症が見られました。そして大事なことですが、腫瘍はありませんでした。
内視鏡で確認したいこととして【腫瘍なのか炎症なのか】というポイントがあります。
今回は炎症であったため、最終段階である、なぜ炎症が起きているかを考えていきます。
なぜ腸に炎症が起きているのか?
寄生虫
腸内細菌叢の異常
食物アレルギー
これらが一般的に検討すべき項目です。これらは内視鏡前に確認ずみで、寄生虫もなくフードの変更や整腸剤・サプリメントで改善はありませんでした。
この場合【炎症性腸疾患】をいう、原因ははっきりわからないが、なんらかの免疫システムの破綻で炎症が起きてしまう病気という診断になります。

内視鏡で、人で言うピロリ菌が見つかる事もあります。その場合は駆虫することで症状が消失することがあります。

今回はピロリ菌が見つかり、それを除菌することで嘔吐は治りました。
吐出の方は変わらないため、今度食道狭窄の治療を行います。

さいごに

たかが嘔吐でも、重症度や期間によってはここまでの検査を実施しないと治療できない事もあります。また、軽い場合は全く問題ない事もあります。そこの線引きを判断するのが、我々の仕事であります。その子の様子の違いや、身体検査などで気になることがあるかどうか?症状の重症度はどれぐらいか?年齢なども考慮して検査の有無を考えていきます。

猫ちゃんを病院に連れて行くことはどうしても躊躇われるので、様子見がちではあると思うのですが、中には重症な嘔吐の場合もありますので、様子の見過ぎには注意してください。様子見ていていいのは、せいぜい1日かと思います。

【いつも通りであるかどうか】と言うのは、とても大切な指標だと思います。飼い主さんが【何か違和感を感じる】場合は大抵いつもの嘔吐と違いますので、ご相談ください。