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日本人に一番多い傷病は犬猫にはほとんど無い!?

【サイレントキラー】と聞いて何を思い浮かべますか?

知らぬ間に忍び寄り急に命を奪っていく疾患はいくつかありますが、今日お話しするのは

【高血圧症】

です。タイトルにもあるのですが、日本人に一番多い傷病は高血圧症です。
下の表は厚生労働省が公表しているものです。
高血圧がダントツで多いですよね。あーやっぱり歯周病も多いんだなーとか呟きながら、ふと疑問に思うわけです。
では犬猫ではどうなんだ?と。調べてみました。こちらはアニコム白書2023より引用です。
どこにも高血圧症がありません!これはどういった理由が考えられるのでしょうか?
本当に犬猫には高血圧が少ないのでしょうか?

犬猫は高血圧が少ないのか?

犬猫の高血圧有病率 ( どれぐらいの子が高血圧になっているか? )
犬の報告で健康そうな犬の0.5〜10%健康そうな猫の2%で高血圧症が見つかったというデータがあります。
うーん。多いんだか少ないんだかよくわからん!という感じですね。
人と比べてみましょう!

先ほどのデータから割合を出すと有病率はおおよそ8%です。

・犬の有病率0.5〜10% 猫の有病率2% VS 人の有病率8%

このデータで言えることは、人ほどは多くないけど、実際は現在治療している高血圧の犬猫よりもっと多く子が治療が必要なはず!と言うことです。

ただガイドラインによると若い動物では高血圧は少なく、9才以上での測定が推奨されています。
なぜでしょうか?これは人でも当てはまることなのですが、以下をご覧ください。
高血圧の原因
当たり前にイメージつくと思うのですが、人では高齢になる程血圧は高くなりますよね?
これは犬猫にも当てはまります。
なぜなら高血圧の原因として、二次性高血圧と呼ばれるものが多いからです。

二次性高血圧とは何か病気があるから血圧が上がる というものです。

これは大切なので覚えておいてください。

・腎臓病
・クッシング症候群
・甲状腺機能低下症/亢進症
・糖尿病
・肥満
・短頭種

これらの疾患があることで血圧が上がる可能性があるということです。
その上、これらの疾患は高齢になる程なりやすい

つまり高齢になる程高血圧になっている可能性が高くなる
ということです。

また言い換えると
上記疾患がある場合=高血圧を疑う
高血圧がある場合=上記疾患を疑う
そして話は戻りますが、高血圧がサイレントキラーと呼ばれる所以についてです。


なぜ高血圧症はサイレントキラーと呼ばれるのか?

高血圧の標的臓器障害
標的臓器障害とは

血圧が高いせいで特定の臓器にダメージが与えられることを言います。
その特定の臓器とは
脳・血管系
心臓
腎臓
こんな大事な臓器にダメージを与えてしまうのです。

人の場合心筋梗塞や心不全、大動脈解離、脳梗塞などを引き起こす要因になるとされ、
それゆえサイレントキラーと呼ばれています。

幸い犬猫では心筋梗塞や脳梗塞などは少ないですが、
これだけ重要な臓器にダメージを与える高血圧を放っておくと、寿命を縮めることになってしまいます。

さいごに

小難しい話を続けてきましたので、まとめます。
高血圧は多くの子が抱えているかもしれない問題である
高血圧の原因は他の病気かもしれない
高血圧のせいで重要な臓器にダメージが出る
高齢犬にとって血圧測定は大切
こんな感じで、まとまります。
現状ほどんどの犬猫で血圧が測定されていないことから、
当院では秋冬健診を受診される9才以上のわんちゃんの血圧を測定していきます。
(猫ちゃんにとっては大きな負担になることもあるため、猫ちゃんの飼い主様で血圧測定を希望される方はご相談ください。)